【第51回】 足腰の鍛錬

時代が進むにつれてますます使わなくなってくる体の部位は、なんといっても足腰であろう。通勤電車で1時間立っていることはあっても、普通の人は1時間と歩くことはないのではないか。電車、地下鉄、バスなどの公共の交通機関がますます発達し、タクシーやマイカー、それに自転車などにより、歩くのが少なくなっている。

武道や武術がさかんだった時代には、移動は基本的に徒歩であった。当然、その頃の人の足腰はしっかりしていた。合気道の稽古も、足腰がしっかりしていることが前提であった。それ故、当時、合気道に入門できたのは、原則的に柔剣道の有段者であったし、我々が入門した頃でもまず体をつくるべく、しっかりと腕を持たせたり、打たせたりする稽古や、座り技を沢山やらされた。

現代人はあまり歩かなくなったことから、足腰が弱くなっているので、合気道を修行するためには、しっかりした足腰を意識してつくらなければならない。昔の人のように毎日10キロ、20キロと歩けばいいが、忙しい現代ではそれは難しい。山登りも足腰を鍛えるにはいいが、毎日はできない。鍛錬するためには何事も毎日やらなければ効果がない。

足腰を鍛えるために、誰でも、毎日、手軽にできるものに四股がある。四股は相撲の世界で何百年にわたって受け継がれている伝統的な鍛錬法である。長く受け継がれているということは、そこに意味があるからであり、四股は強靭で、柔軟な足腰をつくるのに優れているからである。

四股を踏むにあたって注意することは、毎日できる回数を決めて、その回数を毎日やることである。大東流合気柔術の故佐川師範は、毎日、四股を1000回踏んだと言われるが、普通の人は時間的にも1000回は難しいだろう。当然、多ければ多いほどいいわけだが、100回ぐらいでも十分効果はあるようである。

もう一つは、上げた足が地(床)についたら、一回毎に、写真のように股を割って、仕切りの体勢をとるといい。股関節が柔軟になるし、太ももやふくらはぎも筋肉がついて柔軟になる。四股を毎日踏んでいると太ももやふくらはぎに筋肉がついてくるのがよくわかる。

はじめは足も上がらず、静止時間も短く、片足で立ったときのバランスも悪いし、格好もさまにならないだろうが、やっているとそれらの問題も次第に解決されてくる。足腰を鍛えたいなら、まずやってみることだ。