【第502回】  技の生み出し

合気道は、技を練り磨いて精進する武道である。技は宇宙の営みを形にしたものであり、宇宙の条理・法則に則ったものでなければならない、と教えられている。相対で受けの相手にかける技は、陰陽、十字などの理合いでかけなければならない。円の動きのめぐり合わせが、合気の技である、ということも書いてきた。

確かにその法則に従って、例えば手足を陰と陽でつかえば、誰でも技は効くようになるから、宇宙の法則を身につけていくことが、よい技を生み出すことになるだろう。すべて、宇宙の法則に合していなければならないのである。

しかし、開祖はよい技を生み出していくためには、この他にもやることがあるといわれている。例えば、「合気は、宇宙の初めからの歴史を悉く身心に吸収し、そして森羅万象の大気を胎蔵し、それを己の本能によって、神代にさかのぼり、また、進化の歴史を未来に及ぼし、そして古も未来も一身に胎蔵して、技を湧出するのである」(簡約)(「武産合気」P81)。

つまり、合気の技は神代から今現在までの歴史と気を胎蔵し、己に授けられた本能(性)で神代にさかのぼったり、そして未来にもつなげていく「智(ひかり)」によって湧出される、といわれているのである。

従って、技は今の時と場だけでよい、というものではなく、神代の神様たちにも、昔の武術家、そして未来の人たち、万有万物にも恥ずかしくなく、納得してもらうようなものでなければならない、というのである。

さらに、技は宇宙を創った大御神の宇宙楽園建設の御心の愛と宇宙生成化育に合致するよう、乱さぬように、つかっていかなければならないし、宇宙と万有万物の宇宙完成の喜びに結びつくものでなければならないだろう。

開祖はまた「技はその造化機関を通して科学化されて湧出してくるものである。これを誤まつことなく霊と体と調和のとれた、フトマニの神意を体得して技を生み出してゆくことである。」(「武産合気」P81)といわれている。

ここでの技はどのようであるべきか、を解釈してみると、「造化機関を通し」というのは、技は「タカアマハラ」と「自己」の造化機関を通し、宇宙の法則という科学に従って生み出される、ということになるだろう。つまり、技は宇宙の働き・営みと、己の体の働きが一体となり、法則に則って生み出される、ということである。ちなみに造化機関のことを、開祖は「タカアマハラは造化機関であり、人もまた同じ素質、同じめぐり、動きをもっている造化機関なのであります」といわれている。

さらに、この法則に反しないように、心(霊)と体と調和をとりながら、「う」のことだまの御働きを神習い(フトマニの神意を体得)、技を生み出していかなければならない、ということである。

このように、さらなる技は神代からの歴史と大気を一身に吸収し、古から未来の時間空間を腹中に胎蔵して、「タカアマハラ」と「自己」の造化機関を通し、アウンの科学によって生み出していかなければならない、ということのようである。