【第474回】 体を壊さないために

合気道は健康法でもあり、多くの老若男女がそのために稽古をしている。健康法とは、風邪を引きにくくなったり、精神的に健康になったりするほかに、体を丈夫にしたり、体の働きをよくすること等があるだろう。

しかし、稽古すれば健康になるはずが、不健康になってしまう稽古人もいるのは残念である。これは結果論であるが、合気道の稽古をしなければ不健康にならずにすんだかもしれない。極論をいえば、不健康のために稽古してしまったということになり、残念なことである。

合気道の基本的な哲学、教えにあるように、すべてのモノ・事には裏表、陰陽の両面がある。つまり、よいことがあれば悪いこともあり、危険もあるのである。どんなによいと思ってやっても、その裏には危険が潜んでいることになる。

開祖もそのことを度々警告されている。合気道は健康法であるが、宇宙の法則を無視したり、反すれば、体を壊す、といわれているのである。

以前から膝を痛める稽古人は少なくなかったが、最近は腰や下肢を痛めたり、顔をしかめて技をかけている人が目につくので、気になっている。

そのような人の技づかいや体づかいを見るに、原因は一目瞭然である。例えば、末端の手を先に動かしてつかっているからである。末端の手を振り回すことによって、手にかかった力がもろに腰にくるし、また、手と腰との一連のつながりがないので、腰の一部とだけ接することになっている。そのような動きを繰り返すことで、腰のその箇所を痛めてしまうものと考える。

足を痛めるのも、足を先に動かしてしまう、ということがある。さらに、右左の陰陽を間違えてつかってしまうことがあると見る。

手も足も法則違反によって、開祖がいわれているように、体を壊すことになるのである。特に、合気道で技をつかう際は、相手の重量をもろに手と足に受けるわけであるから、相当の力を受けることになる。その力が行くべきところに行かないで、違った箇所にかかってしまうと、そこを壊してしまう事になりかねない。

手を振り回すなど、手から動かしたり、足を不規則につかえば、遅かれ早かれ必ず体を壊すことになるだろう。体を壊さないためには、腰で手や足をつかうようにする、手と同じように腰も十字につかうようにする等、法則に則った体のつかい方をしなければならない。

合気道で稽古をしていけば健康になり、体もつくられるが、その裏側には危険も潜んでいるのである。しかし、それを恐れることはない。間違った体のつかい方をしていれば、体が教えてくれるはずである。例えば、体にちょっとした痛みや違和感を感じたら、それは、そのやり方が間違いで、やり方、体のつかい方を変えなさい、という体からの警告なのである。

要は、そのような体の声を聴くか、そして、その声に従うかどうか、ということである。その声を無視すれば、体は悲しむだろうが、助けてくれなくなるだろう。そして、どんどん悪い方へと進み、体がいうことをきかなくなって、引退ということになる。

体を壊して早期引退するようなことのないよう、体の声を聴き、十分に気をつけて、稽古していかなければならない。