【第467回】  世間のお役にたてる合気道

合気道家は、俺は四方投げができるとか、二教はピカイチだ、などと思っているかも知れないが、合気道をあまり知らない世間の人は、そのようなことは関係ないし、興味もないだろう。それどころか、そんなことができる人など野蛮だ、等と思われるのが関の山ではないだろうか。

だが、人は誰でも、どこの国の人でも、健康で、元気に長生きしたいと思っているし、そして、満足できる人生を送りたいと思っているはずである。もし、合気道が、この世間の人の望みを少しでも叶えるお手伝いでもできれば、合気道は世間から評価されることになるだろう。

合気道は、そのすべてではないにしろ、その多くはできるし、合気道家はそれをできるように修業しなければならない、と思う。

まず、健康で、元気で長生きするためには、己自ら健康で元気に生きていかなければならないし、そのように修業をしていかなければならないだろう。健康とは主に体で、元気とは心が主体であるだろうから、体と心の鍛錬ということになるだろう。

体の鍛錬は、体の機能を知らなければならない。自分の体を知らなければ、健康でいられるはずがない。合気道では、人体とは何かを教えており、その教えに従って体をつかい、技をつかわなければならない。

つまり、人の体は宇宙の創造物であり、宇宙のミニチュア版で、本来、宇宙の営みに合致して働くという。従って、宇宙ができ、それが機能しているように、人体も縦と横の十字でできており、その十字で機能するようにできている。

また、万有万物は陰と陽が表一体になっており、陰と陽がその陰陽を変えながら働いているのである。人の息も、縦と横の十字で機能している。技も業も、十字の呼吸、いわゆる生産び(いくむすび)でやらなければならない。

これは、技の稽古をしていない世間の人には難しいだろうが、もし、体が硬くて曲がらないということならば、曲げたい箇所をこの生産びの呼吸に合わせてやるようにしてもらうとよいだろう。

さらに、できれば体のすべての関節を、この生産びの息に合わせて伸ばしたり、縮めればよい。合気道では、これを体の節々のカスを取るというが、健康法であり、誰でも喜ぶはずである。

また、膝が痛い、腰が痛いという人には、体の表(いわゆる身体の裏側)を使うようにアドバイスすればよいだろう。何事も体の表で仕事をしなければならないのであって、これが自然であり、宇宙の法則だということを分かってもらうのである。

肩が凝るとか、四十肩、五十肩で痛くて手が上がらない人には、肩を抜くことを教えるとよい。手を十字につかうこと、手先から手をつかわないで腰腹でつかうようにすること、なども教えるとよいだろう。

次に、元気の元(モト)であるこころ(心)に関しても、合気道家はいろいろ教えることができるはずである。

まず、欲しい物はすべて手に入れて、お金もあり、何不自由なくても満足できない人には、合気道の教えにあるように「魄を土台にはするが、その上に魂がこなければならないと」といってあげればよいだろう。

経済(魄)は生活の土台になる大事なものであるが、それだけでは人は満足はできないものだ。経済という土台をしっかりつくり、そしてその上に、目に見えないもの(魂)(こころ、精神、知恵、知識、美的センス等)がくるようにし、その魂で魄を導くようにしなければならないのである、と教えてあげる。

日常の戦いに疲れている人がいれば、人はみんなビッグバンのポチにつながっている大家族であるから、他人は敵ではなく、みんな兄弟である、ということを教えてあげるとよい。これは、事実であり科学である。

さらに、動物も植物も鉱物も、万有万物はみんな家族である、ということになる。学校やビジネスの社会では、他人は敵であり、ライバルだと思ってしまうだろうが、宇宙の大きい目で見れば、みんな家族に見えてくるはずである。満員電車の通勤客も家族として見れば、たとえ押し合っていても、がんばれよと応援したくなるはずである。

他にもまだまだあるが、字数が多くなってしまったので、ここまでとする。だが、合気道、合気道家は、世間に対してお役に立てること間違いないし、そうしたいものである。