【第463回】  潮の干満を身につける

今回は、前回の第462回「潮の干満とは」の続きとして、前回書き残した「潮の干満」を技でどのようにつかえばよいか、また「潮の干満」をどのように鍛え身につけていけるか、を書いてみることにする。

まず、「潮の干満」の特徴をもう少し書いてみよう。「潮の干満」は、己が出す力でもなく、動きでもない。地の呼吸がなせる業である。「潮の干満」、つまり地の呼吸は、切れることなく、干と満で常につながっている。技をかける際も、この「潮の干満」でやれば、技と動きが切れないのである。技や動きが切れてしまうようでは、「潮の干満」でやってないことになる。

また、「潮の干満」は引力を生じるものであり、つまり遠心力と求心力が生じるはずである。地に足をつけて、足を縦に垂直に落として踏み、足底を前後・横に振ると、腹は十字、○、∞と動くが、その時に大きい、摩訶不思議な引力を感じる。

では、どのようにすれば、「潮の干満」を感じるようになるだろうか。上記の、引力を感じるところでも書いたが、さらに足底を地につけ、ふくらはぎを突っ張らないようにすると、体全体の重さが地に落ちて、腹と地が結ばれる。

腰腹の重さをふくらはぎに落とし、片方づつ左右の足に体重を落として、体重をかけたまま、足底を前後、左右に動かすと、地からの力が戻ってきて、腹がふくらはぎを支点として、前後、左右、○、∞等、自由に振れる。そうすると、腹で結んでいる地を感じ、己以外の力、潮の干満を感じるのである。この感覚こそ、開祖がいわれている霊れぶりであろうと考える。

初めは立ったままで、この霊れぶりを味わうのがよいだろう。立ったままである程度味わうことができるようになったら、今度は技の稽古で、技に取り入れていけばよい。しかし、これは立った時とは違って難しいだろう。つまり、霊れぶりの感覚、潮の干満の感覚を動きながら得るのは難しいのである。

すぐには身につかないから、技の稽古以外でも稽古しなければならないだろう。例えば、道を歩く時、電車で立っている時などに、その稽古をするのである。

もう一つ、「潮の干満」を身につける稽古を紹介する。それは、お相撲さんがやっている四股踏みである。それを合気道的に、つまり、潮の干満、霊れぶりでやるとよい。地の呼吸でやるのである。地と息の交流をし、呼吸が切れることなく、引く息、吐く息と身体の動きを結んで、動くのである。足が上がる際は、地にある足底に地からのエネルギーが入るようにし、地が体を動かしてくれるようにする。

「潮の干満」がある程度わかってくれば、技でもつかえるようになるし、また、得物も「潮の干満」で振ることができるようになるはずである。手や腕で剣を振るのではなく、「潮の干満」で振るのである。大地の呼吸、霊れぶりで振るのである。

剣も杖も、そして徒手の技も、手先や己の力をつかうのではなく、大地の呼吸である「潮の干満」の中に入れてしまい、それにお任せするのが、これからの稽古ではないかと考える。