【第42回】 足と腹をむすぶ

合気道の稽古で初めのうちほとんど意識していないのは足運びである。手の使い方や手の運びは注意して一生懸命練習するが、足にはそのような注意を払わない人が多い。

しかし、だんだん分かってくるのだが、足の運用は非常に大事であり、極端にいえば技は主に足の運用でかけるということができる。
足は地からのエネルギーを手、腕、体の各部に伝え、希望の方向に進み、相手と結んでいるポイントに全エネルギー、力を送る働きをする。足が居ついていて、手だけ動く手さばきでは、十分な力が出てこないので、技はきまらない。

足の動きは大事であるが、足をむやみに動かせばいいということではない。どんなものにも法則があるが、足の運用にもあると考える。

まず、手と足は基本的に同時、同側、所謂、ナンバで運用されなければならない。この形でないと、足からの力、エネルギーは手先に伝わり難い。

次に、足は腹の下にきて、体重がすべて足にのるようにする。足先が膝から前に出たり、軍事パレードで行進する軍人の歩き方のように、足が腹から遠く前に出ないようにする。

三つ目は、左右交互に陰陽に使うことである。但し、足を動かすというのは、足を進めるだけではなく、同じ場所にいても重心が左右に移動することもある。

四つ目は、半身々々、"撞木"で動くことである。直線で、相手と平行に動かないことである。

五つ目は、足先と腹がむすぶことである。足の動きを腹で感じ、つまり、腹で足を運用するということである。足が地に着くとき、腹でそれを感じることである。腹と足がむすぶことによって足を腹で使えるようになり、足を自由に使えるようになる。また、腹と手が結ばれていれば、足と手もむすぶことになり、手、腹(体)、足が一体で動けるようになる。
足と腹をむすぶ稽古は、道場以外でも、町を歩きながら、階段の上り下り、山歩きなどでも意識してやるのがよい。

もちろん、この他にもまだまだあるはずである。
手の動きは頭で考えると、ある程度できるようになるし、人に教えることもできるが、足はこれが難しい。自分でなんども反復練習して、足に覚えさせ、無意識でも動くようになければならない。合気道の上手下手は、主に足の運用にあるといえるかもしれない。足の運用にもっと注意したいものである。