【第418回】 「いつでも今が一番」

人とは、いつも不満や不平をいう生き物のようである。犬やタヌキが不平をいっているのなど聞いたことがないが、人間は年がら年中、不平をいっているようである。

冬になると「寒い、寒い」といい、夏になると「暑い、暑い」という。食べ物がない時には腹が減ったといい、満腹になると苦しいという。仕事だって、働くのは大変だ、辞めたいといい、仕事がなくなれば、仕事がしたいという。

たかだか100年足らずの一生であるのだから、不平、不満の積み重ねよりも、楽しかった一生だった、といって過ごした方がよいのではないだろうか。これができるかどうかは、気持ちの持ちようであるようだ。

NHKテレビで、都内最高齢の90歳の芸者、浅草ゆう子姐(ねえ)さん(写真)が紹介されていた。長いお座敷歴でいろいろと苦労されながら、90歳にもなられた人のお話には、我々若造には大変勉強になるものがあった。

彼女は3歳で初舞台を踏み、お座敷に立ち続けて75年になる。貧しい家庭、戦争、東京大空襲、疎開など、苦労を重ねてきたはずだが、「苦労と思うかは気の持ちよう。引きずっていてはつまらないでしょ」という。

そして、彼女は「いつでも今が一番」をモットーにして生きているそうである。今でもお座敷に立ち、お座敷で三味線を弾いているそうだが、その姿は90歳とは思えなかった。この若々しさは、彼女の気持ちの持ちようからきていると思われる。

我々合気道家も「いつでも今が一番」と考え、体も心も技も最高のものを出すように、稽古していくべきであろう。そうすれば、「今が一番」と満足することが、いつでもできるはずである。

「いつでも今が一番」で修行し、生きていけば、先に楽しみが持てるはずである。不平をいっているのでは、先にも不満しかないだろう。

彼女の目標は、100歳まで現役でお座敷に立ち続けることだという。また、「芸の道は一生が修業。終わりのない道の中で、心に張りと意気地を持ち続けたい」ともいっている。

「いつでも今が一番」と思い、100歳現役で、道場に立てるようになりたいものである。