【第413回】 摩擦連行作用

前回の第412回に「息のひびきと天地のひびきをつなぐ」というタイトルで、武産合気への技づかい、合気妙用の初歩などについて書いたが、今回はその続きである。それは、合気妙用ができるようになると、技がどのように変わるのか、ということである。

開祖は「こうして合気妙用の導きに達すると、御造化の御徳を得、呼吸が右に螺旋して舞い昇り、左に螺旋して舞い降り、水火の結びを生じる、摩擦連行作用を生じる。」(「合気真髄」)といわれている。

つまり、合気妙用に達したかどうかは、摩擦連行作用を生じるかどうかによることになり、また摩擦連行作用を生じるように、技をつかっていかなければならないことになる。

摩擦連行作用の説明はないが、字の意味と、これで技をつかった感じから、次のようなことではないかと考える。つまり、螺旋で体と息をつかうと、特に力を込めなくとも、相手がそれに連れて舞い上がり、舞い下りる作用・働き、ということであろう。摩擦とは、力を込めるのではなく、いわゆる「天之浮橋に立つ」という状態である。これはつまり、押すでもなく引くでもない触れ合いで技をつかう、ということになるだろう。 

摩擦連行作用をもっとも実感できるのは、「入身投げ」「天地投げ」「呼吸法」等である。体力や腕力などによる力ではなく、呼吸により相手とくっついて一体となると、相手は自然に舞いあがり、そして、相手は自ら舞い降りる(倒れる)のである。相手が舞い上がるのは、こちらの力ではない。力では決して相手は舞い上がってくれない。

これは自分以外の力であり、ここでは「御造化の御徳を得」といわれるものである。また、相手とくっつくためには、十字で、天之浮橋に立たなければならないから、「水火の結びを生じる」のである。

この「水火の結び」は、宇宙の万有万物をつくり、営ませているわけだから、技も体も水火の結びで使わなければならないことになる。これを開祖は「水火の結びは、宇宙万有一切の様相根元をなすものであって、無量無辺である。」(同上)といわれている。

さらに、「この摩擦連行作用を生じさせることができてこそ、合気の真髄を把握することができるのである。」(同上)とある。摩擦連行作用はMUSTのようである。摩擦連行作用が生じるように、入身投げ、天地投げ、呼吸法など、まずは自分の得意なもので練習するのがよいだろう。

この摩擦連行作用が生じるようになると、相手の体力、腕力にはあまり関係なく、技をつかえるようになる。体の大小に関係なく、相手が舞い上がり、舞い降りるようになるのである。こうなると、魄の稽古を脱し、武産合気の稽古をしていると思えるようになる。

そして、このようなことが合気道には力はいらない、ということではないかと考えるのである。