【第411回】 天と地の呼吸で技を生み出す

合気道は技の練磨により上達していくといわれるが、年季とともに、これが容易ではないことがわかってくるものである。初心者のうちは、合気道の基本技といわれる形を技と思って稽古をし、形を覚えれば技ができたと思う。しかし、形と技とは違うのである。

もちろん、形には技や技要素などが詰まっているはずなので、形を繰り返し稽古することは、技を身につけるためにも意味がある。基本的には、形を稽古することが、技の練磨ということになるだろう。

技は宇宙の営みを形にし、宇宙の条理、宇宙の法則に則っているものであるわけだから、自分勝手につくっていくのではなく、宇宙の教えに従って身につけ、鍛錬していかなければならないはずである。

開祖は『武産合気』で、技を生み出すためにはどうしなければならないか、次のように書かれている。例えば、

*理の呼吸:はく息は である。ひく息は である。腹中に を収め、自己の呼吸によって の上に収める

これをまとめると、技を生み出すためには、天の気による天と地の呼吸を陰陽につかわなければならない、ということになるだろう。

では、実際の技の練磨の稽古ではどのようになるかを考えてみよう。
どんな形もみな同じはずだが、ここでは「片手取り呼吸法」でやってみることにする。
  1. まず、相手の前に立ったなら、天と気持ちを結び、天からの息を頭から腹に入れる。(これが、天の気による天の呼吸である)
  2. 腹から息を出し、息を地に落としながら手を出して、相手に持たせる。(これが、天の気によって天の呼吸と地の呼吸が合わさることである)
    ここまでは、縦の腹式呼吸を使う。従って、息は で丸く使う。
  3. 相手が手を取ったところから、息を横の胸式呼吸で入れながら技をかける。(ここで、息がそれまでの縦の腹式呼吸から横の胸式呼吸と十字の息使いになる。息は、 で使う。もちろん、手も足も体も十字で陰陽に使わなければならない。)
  4. 技をかけている手(腕)が相手の首や胸に接したところから、今度は縦の腹式呼吸で、接点を動かさずに、重心の移動をしながら、体と地を結ぶように息を地に落とすと、相手は自ら地に倒れていく。(地との呼吸に合ったのである)
なお、「天の呼吸との交流なくして、地動かず、もの(技)を生み出すのも天地の呼吸によるものである」といわれているように、天地の呼吸は大事であるが、地の呼吸(横、潮の干満)を動かすためには、まずは天の呼吸が必須ということになり、さらに、天地の呼吸のための天の気が重要ということになる。

このようなことが理の呼吸、天地の呼吸であり、この理の呼吸によって、技が生まれてくるのではないだろうか。この天地の呼吸を、すべての基本技(形)でやっていくことが、大事な技の練磨になるはずだ。