【第407回】 下腿三頭筋

技をかける際には、手を折れ曲がらないように使わなければならないが、足も同様である。足は大きく分けると、足首から先、下腿、大腿、になるが、特に下腿と大腿のつなぎの個所、膝の後ろのいわゆるヒカガミのところが折れ曲がってしまいがちである。

ここが折れ曲がると、@足底からの力が腰まで伝わらないので、手先にその力が届かないA足全体のバランスが悪くなる。これは四股を踏めばわかるB腹に力が集まらず、腹が前に出ないで、腰が落ちてしまい、力が後ろに残る、ということになる。

それゆえ、下腿の後面を折れ曲がらないようにすることが大事であるわけだが、よほど注意しないと身につかない。手の場合は、手の関節のところを十字に使っていけばよいが、足の場合は手のように十字に使うのが難しいのである。手は頭で使えるが、足は頭では使えない。

下腿後面を作っているのは下腿三頭筋で、通常「ふくらはぎ」といわれている。下腿三頭筋は二つに分れ、二頭筋の脾腹筋とヒラメ筋で構成されていて、足の底屈(足底の向きに屈曲)や膝の屈曲に貢献する。また、ヒラメ筋と脾腹筋の踵骨腱、すなわちアキレス腱は、人体で最も太い、最強の腱といえる。

ここには人体で最強の力が出せる筋肉があるわけだから、これを使わない手はないだろう。そのためには、下腿後面の下腿三頭筋にしっかり働いてもらうことと、膝が折れ曲がらないようにすることである。

フィギュアスケートの国際大会など見ていると、日本選手の膝が若干折れ曲がり、まっすぐ伸びきっていないのが気になる。そのためか、まっすぐ伸びた外国選手に差をつけられてしまい、得点をかなり失っているのではないかと思う。

膝が折れ曲がりがちになるのは、日本人の坐る文化から来るものだろうから、よほど注意しないと治らないだろう。かつて本部道場で、有川先生の時間に船漕ぎ運動をいっせいにやっていた時のことである。生徒の動きを見回っておられた有川先生が、私の後ろ足のひかがみのところを上からポンと叩かれたら、体勢が崩れてしまった。その時、先生が、そこを伸ばせ、折っては駄目だ、といわれたのを思い出す。

合気道で技を使う際には、手と同様に、足も大腿と下腿と足首が一本になるようにしなければならない。特に、下腿の後面の下腿三頭筋には、気持ちと力を通して、足首と大腿をつなげて動かさなければならない。膝には力を加えず、折れないようにする。膝に力が加わると、先へ進むことができなくなるだけでなく、膝を痛めることにもなる。

下腿三頭筋に力が集まり、伸びるためには、歩の進め方が大事である。ただ歩を進めても、膝は折れ曲がってしまい、足底からの力が切れてしまうことになる。足裏三点の「あおり」と呼吸が必要なのである。これは、正面打ち一教の重要な要素であると考える。

手の次は、足である。やることはどんどん増えていくばかりだ。