【第407回】 自己の妙技をつくる道
終わりのない合気道の修行を延々と続けているわけだが、時には原点に立ちかえって、初心の気持ちで再出発するのもよいだろう。原点に立ちかえるというのは、自分の進んでいる道がはたして合気の道かどうかを確認したり、今の技や考えの確認と調整、途中見落としてきたことを見つけ出して身につけるなどであろう。
いちずに続けていると、大事な事やわからないことをわかったつもりになり、わかったこととしてやり続けてしまうかもしれない。そのよい例が「合気道」である。長年、稽古しているのであるから、わかったように思っているが、実際には、よくわかっている稽古人はそう多くはないのではないだろうか。
時々、入門した頃の原点に戻って、合気道とは何か、どのように修練していくべきか、稽古の目標は何か、等などを改めて考える必要があるだろう。原点に戻ると、以前のものより必ず一段上のものや深いものが得られるはずである。
「合気道」についてはこれまでも考えてきたが、最近『合気真髄』を読み直していると、下記の文章に目が止まった。これまで何度も見ているはずだが、今回はこれこそ自分が求めている「合気道」を最も的確に表わしているものではないかと思った。
そこで、「合気道」について、この文で再考してみることにしよう。
「合気道は自己を知り、宇宙万有の妙精を自己に吸収し、大宇宙の真象に学び、理を溶解し、法を知り、光りある自己の妙技をつくる道である」(「合気真髄」)
これを、これまで考えてきたこととあわせて解釈してみる。
- 「自己を知る」とは、自分はどこから来て、どこへいくのか。何ものなのか。なぜ生きているのか。使命は何か、等を知る事。
- 「宇宙万有の妙精を自己に吸収する」とは、宇宙に満ち溢れているエネルギー(熱、光、力)を身に取り込む事。最終的には、宇宙のひびき(言霊)との一体化であろう。
- 「大宇宙の真象に学ぶ」とは、宇宙の真理に従うこと。宇宙から学ぶことであろう。
これを、開祖は「天地の真象を眺めて、そして学んでいく。そして悟ったり、反省したり、学んだりを繰り返していかなければいけない。要するに武道を修行する者は、宇宙の真象を腹中に胎蔵してしまうことが大切で、世界の動きをみてそれから何かを悟り、また書物をみて自分に技として受け入れる。ことごとくみな無駄に見過ごさないようにしなければいけない。すなわち山川草木ひとつとして師とならないものはないのである。」といわれている。
- 「(大宇宙の)理を溶解する」とは、宇宙の理を発見し、それを身につけること。例えば理とは、万有万神の条理、神の条理、円転の理、万古不易の真、宇宙の万世一系の理、天地日月の理、水火の活力神妙の理、天地人和合の理、等。
- 「(大宇宙の)法を知る」とは、宇宙の法則を発見し、それを身につけること。
例えば、法とは宇宙の美しき御振る舞いの貴い営みの御姿を明示する律法、万有の生成化育の法、十字の法(すべて陰陽の十字でできている)等。
- 「光りある自己の妙技をつくる道」とは、真空の気がいちはやく五体の細胞より入って五臓六腑に喰い入り、光と愛と想になって、技と力を生む光る合気にしていく、自己を磨き研ぎつくるの道、と開祖はいわれている。
これから、合気道の修行は、この文を噛みしめ、己をさらによく知り、宇宙の力を身につけて、宇宙の真理に従い、宇宙の理を探求し、宇宙の法を身につけて、それを技に取り入れ、光る合気の妙技をつくっていかなければならない、と改めて思った。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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