【第4回】 車の両輪

書いた字は、その人の性格、人格を表すといわれている。合気道や他の武道の稽古でも、その人の技はその人の性格、人格を表している。

技が変わると、人も変わってくるものである。また、人が変わると技も変わる。
稽古事は、素晴らしい人を作る方法なのだ。書道、華道、茶道、合気道などの修行を通して、自分の癖を取り、より美を求め、理想により近付くよう努める。そして、自分をより素晴らしい人間に変えていくことが大切である。

稽古で大切な点は、新しいことを学ぶことだけでなく、癖を取り去ることである。人はがいしてやり易い我流に陥りがちである。はじめに我流でやれば、後になればなるほど本流、つまり本質から乖離していくことになり、稽古の意味が半減してしまうことにもなる。稽古事の意味と重要性はここにある。
武道や茶道や華道などの稽古事が古くから続いているのは、人は無意識のうちに自分をよくしようとする気持ちがあるからだろう。

仕事で長い間不自然な姿勢で仕事をしたりしていると、肩こりとか、腰が痛いとか不快な症状がでてくる。合気道の稽古に行き、受身で手足が伸ばされたり、ゴロゴロころがると、無意識の内に骨や筋肉が正常に戻って、終わったときには骨や筋肉が気持ちのいい健康な状態に復帰する。稽古の効用は、こんなところにもある。つまり、何か一生懸命やれば、逆のことをやると正常に復帰するわけである。

物事は左右、上下、裏表、陰陽などでバランスがとれて上手く機能する。
合気道の稽古でも反対側の手や足などの体の部分を意識すると上手くいくものである。技が上手く掛からない人の動きを見ていると、反対側が死んでいる。

車の両輪とは、目に見えるモノだけではない。例えば、力と技、知識と知恵、厳しさとやさしさ、科学と芸術(音楽、絵画、詩歌)などである。この車輪のバランスがとれていなければその人のバランスがとれず、うまく機能しないであろう。