【第387回】 宇宙の営みを自己の内に感得する
合気道は、宇宙組織をわが体内に造りあげていき、宇宙組織をことごとく自己の身の内に吸収し、結んでいかなければならない、といわれる。
そのためには、宇宙の営みが自己のうちにある、を感得しなければならない、と教わっている。合気道の技は、宇宙の条理、宇宙の法則、そして宇宙の営みに則っていなければならないので、技の練磨を通して、宇宙の営みを感得し、さらに、それが自己のうちにあることを感得し、もしなければ、それを身につけていかなければならない、ということだろう。
まず、宇宙の営みとはどういうことを意味するのか、考えなければならないだろう。これまで教わったり、開祖の残された聖典から、次のようなことではないかと考える。無限にあるだろうが、その内のいくつかを書いてみる。
- 宇宙は魂(精神、念)と魄(物質、エネルギー)、見えないものと見えるものでできている
- 宇宙の一元の本から一霊四魂三元八力という営みをしている
- 宇宙は宇宙楽園建設という目標を持ち、それに向かっている。そのために、万有万物を分身分業で使命を与え、生成化育をさせている
- 宇宙は陰陽で万物を創り出している
- 宇宙は生成化育で穢れが出てくるから、それを禊いでいる。例えば、星や火山などの爆発、嵐、台風、雨、風等など
- 宇宙は十字で安定した営みをしている。宇宙は天下水地の十字の交流がある。天の浮橋は魂と魄が正しく整った十字であり、万有万物は縦と横、経と緯、厳と瑞の十字でできているといえるだろう。
- 宇宙の心は、上下四方、古今東西、宇宙のすみずみまでに及ぶ偉大なる「愛」
このようなことが、宇宙の営みであるとすれば、これらの宇宙の営みが自己の内にあるはずである。もしそれが自己の内に感得できなければ、身につけるように修行していかなければならないだろう。上記の事柄を順に考えていくと、次のようになるだろう。
- 宇宙の魂と魄は、人にもある。合気道では魄を鍛えることも大事だが、魂はその鍛え上げた魄を使いこなせるようならなければならない。魂が魄の上になるように、技の練磨を通して練磨しなければならない。
- 人も一霊四魂三元八力を与えられている。己が、一霊四魂三元八力(宇宙組織の教え)の姿態をもって、清浄に融通無碍に緒結びし、宇宙の内外に魂を育成して邁進していかなければならない。
- 宇宙は宇宙楽園建設という目標を持っているが、人も意識したり無意識の内に、分身分業でそのお手伝いをしている。宇宙楽園建設のお役に立つものは評価され、それを破壊したり、反するものは、悪いとされることになる。
- 人にも陰陽があり、その陰陽を上手に使って生活し、仕事をしている。合気道の技をつかう際は、体や息を陰陽につかわなければならない。
- 人も生成化育をしていく場合、どうしても穢れてくるわけだから、禊をしなければならない。合気道は体と心の禊であるから、禊と思って稽古をしなければならないだろう。
- 宇宙は十字であるように、人も十字でできているし、十字に機能するようにできているようである。手足の関節は十字に機能するようにできているし、息も縦と横の十字の呼吸、そして心(縦)と体(横)との十字である。
開祖は、厳・瑞が完全に調和し、宇宙の理に従って存在及び活動する十字のイズノメにならなければならない、といわれている。
- 宇宙の営みの心は「愛」であるように、開祖は、武道の鍛錬を「森羅万象(宇宙に存在する、すべてのもの)を正しく産み、まもり、育てる神の愛の力を、我が心身の内で鍛錬すること、と悟った」といわれている。
愛や、愛の力が身に付くように、合気道の稽古をしていかなければならないということだろう。
まだまだ宇宙の営みはあるわけだから、合気道の稽古を通して、引き続きそれを探し続け、身につけていかなければならない。そうして修行していけば、宇宙が自己の身の内に入り、宇宙と一体化し、開祖のように「我、宇宙なり」となる日が来るかもしれない。それが無理でも、宇宙に少しは近付くはずである。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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