【第380回】 体と心の鍛錬

合気道の修行の主な目的は、体を鍛えることと、心を鍛えること、と言えるだろう。この目的は、他の武道でも同じであろうし、また、日常生活を生きていくためにも同じであろう。

合気道で体を鍛えるのは、合気道の技を練磨するためである。合気道の基本技の形を繰り返し稽古し、技の真髄にどんどん深く入りながら、体もそれに伴って鍛えられていくのである。

開祖が「私は武道を通じて肉体の鍛錬を修行し、その極意をきわめた」と言われているように、いろいろな武道を修行され、そして合気道をつくられたわけだから、合気道で体ができますよ、と言われていることになろう。

合気道の技で体が鍛えられる理由は、合気道の技は、宇宙の営みを形にしたものであり、宇宙の条理に則り、宇宙の意志に従ったものであるからである。
従って、合気道の技を練磨していけば、体の部位が本来の宇宙より与えられた機能を果たすことになり、無理なく自然に体ができてくることになる。

武道として体が機能するためには、呼吸力が必要であるが、それも技の練磨で身につけることができる。体と呼吸を十字や円く使うのである。この呼吸(息づかい)は、技の練磨、そして体をつくる上で大事である。

体を鍛える目標となるのは、一霊四魂三元八力の三元八力であろう。まずは三元、流(気)、柔、剛、またイクムスビ(△)、タルムスビ(□)、タマツメムスビ(○)の体をつくることであろう。柔軟で俊敏で強固な体をつくることである。

そして八力、例えば、動、静、引、弛、凝、解、分、合(動と静、引と弛、凝と解、分と合は対照的)(本田親徳)を身につけ、引力のある体をつくることであろう。

次に心の鍛錬であるが、その目標とするものは、一霊四魂三元八力のうちの一霊四魂ということになるだろう。

宇宙の初めの神の一霊から、心と体の元が創られ、従って、万有万物この一霊に繋がっていることを知ることであり、そしてその意思に従い、一霊と交流していくことである。

そして、四魂の心を磨いていくことである。つまり、幸魂、和魂、荒魂、奇魂を深め、拡大していくのである。例えば、古神道では、幸魂は「智慧」であり、和魂は「調和」であり、荒魂は「能動」であり、そして奇魂は「生産」などと言われている。この解釈を基にすれば、智慧があり、調和のとれた、能動的で、生産的な心に育てることになるだろう。

心と体がどのようにできたのか、さらに心と体の関係を、開祖は『合気真髄』で、「世の初め神の光は水、火、天地をわかちたまいて、一霊四魂と水火より生みなせし、元素と力をもって万有の心と体をつくり、万有に分かつ。その体を守るものは霊なり。霊は体を守るべきものなり」と言われている。

一霊に感謝しながら、心を守れる体をつくると同時に、体を守れる心を作る鍛錬をしていかなければならないということだろう。