【第366回】 腰は体の要
腰という字は、体(月は体の意)と要(かなめ)で構成されており、「体の要」という意味であるが、武道をたしなんでいると、腰はまさしく体の要であるということを実感する。
まず、腰と技と業でつかう体の部位とは、すべて、そして常に、結びあっていなければならない。腰と手、足、首、さらに、指先、手首、肘、肩や拇指球、踵、膝、下腿、大腿、また、上腕二頭筋、上腕三頭筋、菱形筋、前鋸筋、大腰筋、内転筋等などは、常につながっていなければならないのである。
腰とこれらの部位がつながっていなければ、必要な力が十分出ないし、手足にも伝わらない。技がうまくかからなかったり、あるいは、つまずいて転びそうになったり、電車の揺れでふらついたりするのも、腰と部位の結びが切れているか、弱いことに原因があるように思える。
では、腰が体の要であるという根拠を書いてみよう。
- 技をかける時も、歩行などで体を動かす時も、まずは腰に力が集まり、その力を腰からつながっている部位に、必要に応じて分配するのである。
歩を進める場合には、まず力(エネルギー)を腰腹に集める。腰は体の要であって、体のいわゆる表側にある。腹は体の裏側にある要であり、腰の対照になっていると考える。
だから、腰と腹は体の表裏一体の要といえるだろうが、主な要は表の腰であると考える。従って、腹とか丹田は大事に違いないが、腰があっての腹、丹田であるから、腰を忘れてはならないはずである。
- この腰腹に集めるエネルギーは、初めは自分の心体のエネルギーを使う。修行を積んで「空の気」(大地のエネルギー)、つまり森羅万象のエネルギーを得るようになれば、それを入れることができるだろう。さらに「真空の気」(宇宙のエネルギー)でやることができるようになれば、さらによいということになる。
この「空の気」や「真空の気」を集めるところは腰腹であるから、腰は体の要であることになる。
- 歩を進める際には、腰腹に集まった力(エネルギー)を、腰と結んでいる足に必要分を流す。手で技をかける場合には、手に流す。
相手が手をつかんでいれば、腰を中心にして、腰からの力で、そして腰でその手を回旋、回転しながら動かす。つまり、腰は支点となり、力点となり、さらには作用点として、三つの働きをすることになるから、体の要ということになる。
支点や相手との接点は、はじめから動かしてつかうことは厳禁であるが、腰はその意味で例外のようだ。
- 腰と体の部位とは、腰が主体となり、力のやり取りをする。例えば、片手取りの四方投げの場合、まず、相手がつかんでいる手先に腰から力を送り、つかませている手を回旋、そして回転して、技をかける。この時、相手の重力が、この手先から腰に伝わってくる。この力(重力)を腰腹に十分入れたら、今度はこの力を腰から相手との接点である手先に返してやる。腰からの力なので、大きい、相手をくっつけてしまう引力のある力であり、相手を結んでしまうものである。
このような力のキャッチボールは、手と腰だけでなく、足と腰でも行われている。例えば、四股を踏むと、よくわかるだろう。腰から足に体重がかかると、足から腰にその力が腰に戻ってくる。その力を腰腹にためると、腰を中心に反対側の足が上がってくる。
いずれにしても腰が体の中心的役割を果たしており、体の要であることは、疑う余地がないようである。
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