【第360回】 合気道は真の武道 その2 得物の稽古

前回は、合気道は真の武道であり、武道の基であるから、武道の3タイプの要素、つまり、掴み・組合う稽古、打突の稽古、得物の稽古をしなければならないと書いた。だが、字数の関係で、3つ目である得物の稽古が書けなかったので、今回書くことにする。

真の武道を合気道で探求するためには、得物、つまり剣とか杖とか棒をつかいこなせなければならない。開祖は「合気道の体術ができれば、剣術もできねばならず、杖術も薙刀もそれに応じて、自在にこなすことができねばならない」(「合気道技法」)と言われているのである。合気道は剣の理法を体に現わしたものともいわれ、特に剣とは深い関係がある。

しかしながら、剣や杖を使いこなすのは容易ではない。それは、まず合気道の剣も杖も、剣道の剣や杖道の杖とは根本的に違うからである。剣道や杖道では、合気道では絶対にやってはいけない「攻め」の術がつかわれる。敵をいかに切ったり打ったりするかが稽古の主眼であり、つまりは敵をやっつける術であり、得物は敵をやっつける武器となる。攻め技のない合気道とは、根本の考え方が異なっている。

合気道は基本として、体術であり徒手である。合気道での武器は、ただのモノではなく、自分の徒手の延長であり、いうならば、手の先に得物という手が増えたようなものである。だから、徒手の動きに武器が加わったにすぎない。

従って、合気道では徒手ができる程度にしか得物がつかえない。だから、得物が十分つかえなければ、徒手はまだその程度のレベルであるということになる。

「開祖は常に、『合気道を修行する者は、剣を持てば合気剣法になり、杖を持てば合気杖術にならなければならない』」(「合気道」)といわれていた。剣があれば合気剣法になり、杖があれば合気杖術になる。そして、合気剣法や合気杖術ができるようになれば、剣や杖がなくとも徒手で、合気剣法、合気杖術がつかえるようになる。それが、昇段試験にもある素手による太刀取りや杖取りであろう。

剣や杖が使えるようになってくると、剣や杖の得物がなくても、あたかも得物を持っているように手足をつかうことができるようになる。そのためには、合気道で剣や杖をもつ場合、その得物をモノではなく、自分の体の一部であり、体の延長になるようにしなければならない。そうすれば剣や杖が心体になじんで、血が通ってきて、自分の体の一部になってくる。

開祖は「合気剣、合気杖での剣も杖も体の延長であるから、この剣や杖にも血が通っている如く扱うことができなければ、真の合気道を鍛錬したとは言えないのである」(「合気道」)といわれている。

真の合気道を鍛錬するのは容易ではない。

参考文献:
『合気道』 植芝吉祥丸著 植芝盛平監修
『合気道技法』 植芝吉祥丸著 植芝盛平監修