【第341回】 次世代のために

人類は数百万年にわたって、生き死にを繰り返している。これから先も、死んではまた次のものが生まれ、を繰り返すことであろう。お陰で、人類は猿とそれほど違わない生活をしていた数百万年前と比べれば、だいぶ違った生活をしている。いろいろと不満や問題はあるが、おおかたの人間は今の生活を捨てて、人類発生初期の生活に戻ろうとは思わないだろうから、今の生活の方がよいということになるだろう。

よい生活というのは、人が求めてきたものが手に入り、満足している生活といえるだろう。人が求めてきたものには、豊かさ、安全、幸せ等などがあげられる。そのため、先人たちはいろいろと努力をし、便利なものを作り、それで培った知恵や知識やノウハウを後世の我々に残してくれた。

人類はこれを繰り返しているわけだが、これは何か目に見えないものに導かれているように、一つの方向に進んでいる、と言えないだろうか。例えば、誰でも、いつの時代でも、人は争いのない平和な世界、愛のある社会、豊かな生活を求めているし、また、飽くことなしに、とことん美を求め、真理を追究し、技を磨こうとしている。一時的に戦争や喧嘩などの争いはあるが、それは後で必ず非難されることになる。

合気道では、すべてのもの、万有万物は、一元の元と結びついており、この大本の意志である宇宙天国、地上楽園のために、人は生き死にを繰り返している、と教えられている。そして、人は誰でもそのために、使命をもっているということである。

人はだいたい100年足らずで死んでしまうので、一人で宇宙天国建設のお手伝いをすることはできない。一元の大神様もそれはご存知であるはずだから、その大神様は、人がそのお手伝いをするための方法を用意してくれているはずである。

一人では無理なことなので、先人から知恵や知識やノウハウを引き継ぎ、それをさらに改善して完成し、次世代の後進に引き継ぐことを繰り返している。人類は数百万年にわたってこれを繰り返したお陰で、今の人類や社会ができたのである。ノーベル賞を取ったり、発明、絵画や音楽などの芸術でも、本人の才能と努力と運だけでなく、先人、先々人、先々々人、・・・のお蔭なのである。

合気道の修行においても、まず我々現世代のものは、先人、とりわけ開祖、そして先輩の残されたものを身につけ、それをさらに深めて、次世代の後進に継承していかなければならないだろう。

これを、次世代の後進が、次々世代、次々々世代へと続けていけば、いつの日か地上楽園、宇宙天国の建設が完成するという希望につながるだろう。まだまだ数百億年かかるだろうが、その可能性があればよい。

だから、次世代のためにも、がんばらなければならないことになる。これが高齢者の務めではないだろうか。

一生懸命にやること、そして、一元の元に繋がっていることで、次世代に継承されることになるだろう。もし一元の大神様の意志に反していれば、次世代に継承されず、その代で消えていくことになるだろう。継承されるのも、消滅するのも、次世代でわかるであろうから、我々現世代は一生懸命やるしかない。