【第333回】 天の呼吸 地の呼吸

合気道は、技の練磨を通して精進していく。技は宇宙の営みに則っており、宇宙の条理に基づいていなければならない。開祖は、合気道は宇宙万世一系の理道であるといわれている。また、開祖は「天の運化により修行する方法が即ち私の合気道であります。この一元より出てくる宇宙の営みのみ姿、水火のむすびつまり天の呼吸と地の呼吸とを合し、一つの息として産み出してゆくのを武産合気というのであります」といわれる。つまり、天の気(十字)によって天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生みださなければならないのである。

ものを生み出すのは天地の呼吸である、といわれるから、技も天地の呼吸で産み出していかなければならないことになる。そのためには、まず、天の呼吸と地の呼吸がいかなる呼吸なのかを確認しなければならない。確認の方法は、開祖が言われていることを、技の練磨を通して試行錯誤していく他にないだろう。

開祖は、「天の呼吸は日月の息(呼吸)であり、地の呼吸は潮の干満である。満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります。天の呼吸により地も呼吸するのであります。」といわれている。呼吸(息)には、日月の呼吸つまり縦の天の呼吸と、潮の干満の呼吸つまり横の地の呼吸があり、その縦┃と 横━の呼吸が十になって交流する。しかし、初めに縦┃の呼吸から始めなければならない。それを横━の呼吸から始めてしまうと、ヒルコのような不完全なものが生まれことになる。古事記にある話は、イザナミノミコト(横━)がイザマギノミコト(縦┃)を差し置いて先に活動したために、ヒルコが出来てしまったということだと考える。技をつかう際は、縦┃から始めなければ、技はヒルコになってしまうことになる。

地の呼吸である潮の干満は、日月の縦┃に対して横━の呼吸である。息を引く(入れる、吸いこむ)と、気(宇宙エネルギー)が体内に入り、下腹が締り、足が大地に収まる。息を引くときの技づかいでは、手の動きは横━になり、これに対して、息を吐くときの手の動きは縦┃になるはずである(実験中)。息を引いて技をつかうと、遠心力と求心力が働くので、体内の血潮が干満しているような感覚になる。地球の潮の干満と人の身体の血潮の干満には、密接な関係があるようである。

開祖は天の呼吸と地の呼吸について、さらに詳しく説明されている。「息を出す折には丸く息をはき、ひくおりには四角になる。そして宇宙の精妙を身中にまるくめぐらし六根を淨め働かすのです。丸くはくことは水の形をし、四角は火の形を示すのであります。丸は天の呼吸を示し、四角は地の呼吸を示すのであります」 下腹に息を入れる(引く)と身体はとなる。血潮が活発になり、地に収まり安定する。そしてく息を吐く。下腹を締めたままで吐くのである。

引く四角の息は火である、といわれている。相手をくっつけたり、自分の円の中に入れ込んだりという技をつかう場合は、主に息を引きながらやって、水の丸い息で収めることになるだろう。

技は天の呼吸と地の呼吸に合わせ、宇宙の理道でやらなければならないはずである。

参考文献  『武産合気』第21回 「合気道は宇宙万世一系の理道なり」