【第328回】 形(かたち)が大事

体をつかうものはすべて形(かたち)が大事である。武道だけではなく、芸事でもスポーツでも、また、肉体的な仕事でも、形が大事である。形で、その人の今現在の実力がわかる。

合気道でも、その人のやっている形を見れば、その実力がわかるものだ。形とは、静止している体勢、体と動きの柔軟性、体の末端と中心との結びと有機性、体の動きの軌跡や拍子や緩急などであろう。

他人の形の良し悪しはわかるものだが、自分の形の良し悪しは自分ではなかなかわからないようで、自分自身で過大評価したり過小評価したりしてしまう。自分の形を正確に評価できなければ、直すこともできないから、上達もできないことになる。技の上達法の一つは、自分の形の実態を知り、その形を直していくことであると思うし、それが最も容易で確実な方法と考える。なぜならば、形は見えるからである。常にこの形でよいのか、どこが悪いのか、どういう形にすればよいのか等、考えながら稽古をしていくべきだろう。

合気道は相対で稽古するので、相手に技をかけたりかけられたりするが、形ができてくると、その二人でやっている形を、単独でも同じようにできるようになる。かつて開祖や直弟子クラスの師範方は我々稽古人に、入身転換や三教など技の形を、単独動作で示しながら説明されていた。これはけっこう難しいことで、すばらしいものとして記憶に残っている。

稽古を積んである程度以上のレベルになると、ひとりでもふたり分の形を動けるようになるものだ。合気道の技の形だけでなく、剣や杖などの得物をつかう形でも同じであり、剣や杖を持たなくても、あたかも持っているとおなじ形をひとりでできるのである。つまり、その形のままで、剣や杖を持てば合気剣、合気杖になるのである。

合気道は基本的には自分ひとりの稽古であり、また、得物を持たない素手の稽古である。合気道の形稽古も、ひとりでも相手がいるように、そして、素手でも得物を持ったかのような形に、ならなければならないだろう。

もちろん、それは容易ではない。単独でもよい形をつくるためには、相対稽古や剣杖の素振りでよい形をつくり、体をその形にはめ込んでいかなければならない。

よい形とは、例えば、

等などである。

相対の稽古でも、得物を持った稽古でも、この形ができれば、素手での単独でもよい形ができるようになるだろう。自分の形がどのようになっているのか、鏡を見ながらやってみるのもいいだろう。