【第326回】 関節の使い方と鍛錬

人間の体は、おおざっぱにいえば骨と筋肉で動いている。筋肉が骨を動かして、仕事をさせるのである。その骨と骨の結合部を関節という。

合気道の技をつかう場合は、この関節のお世話にならなければならない。つまり、うまく技をつかうには、関節の機能と使い方が重要になる。

合気道では、宇宙、つまり万有万物は十字でできている、と教わっている。一元の大神様から二元の精神と物質の元が分かれ、その二元が十字に絡み合って、すべてのモノができてきたといわれる。

人の体も、合気道の目で見てみると、十字でできているといってよいだろう。手も足も、十字に機能するようにできているのである。

人の体が十字に機能するようにできているということは、何か意味があり、やるべきことがあると、開祖はいわれている。だが、今回はそれには触れず、その機能を生かすことの重要性と機能の高め方を考えてみたいと思う。

人の体は十字に機能するようにできていると考えると、技をかける手も十字につかわなければならないことになる。十字につかうということは、○(円)でつかうということである。手首、肘、肩、肩甲骨、胸鎖関節を中心に、円をつくることである。円の中心は、力の支点でもある。合気道の技が円の動きの巡りあわせでできる、ということである。

手首、肘、肩、肩甲骨、胸鎖関節の関節を支点として、十字から円をつくり、関節のカスをとり、鍛えていけばよい。特に鍛えるためには、遠心力の鍛錬をするとよい。鍛錬棒などを、遠心力で振るのである。

力の源は腰であり、腰から力が、胸鎖関節、肩甲骨、肩、肘、手首、指先と伝わってくるはずである。しかし、前述のように、関節同士は離れていて、折れてしまうようにできているので、腰の力が手先までいくのは容易ではない。

関節のところで折れずに力が伝わる秘訣は、「螺旋」である。一本調子の直線でつかわずに、螺旋でつかうのである。螺旋こそは、折れやすい関節同士をくっつける鍵である。相対稽古では、手はもちろん、他の部位も螺旋でつかうようにしなければならない。

螺旋ということは、起点のある円ということである。どちらも、縦横の十字でつくられる。ただ、円と違って広がりと動きがあり、円よりダイナミックでパワフルだということになるだろう。

各関節で螺旋の動きができれば、強力な力(呼吸力)が出るようになる。腰からの力を、胸鎖関節、肩甲骨、肩、肘、手首の各関節のそれぞれで螺旋により、折れないだけでなく、どんどん増幅して指先に伝えられるからである。各関節が大きく、そして柔軟に動けば動くほど、強力な力が出てくることになる。手先だけをつかったり、腕を一本の棒のようにつかうのとは、雲泥の差がある。

関節を体の中心に近い方からつかえば、より大きな力がでる。初心者は概して体の末端(手先や足)からつかうから、力がそれほど出せない。分かりやすい例としては、木刀の素振りがいいだろう。

木刀は腰から振り上げ、胸を開き、肩甲骨を脇にスライドし、さらに振りかぶり、そして腰から胸鎖関節、肩甲骨、肩、肘、手首へと力を伝えて切り下ろしていくのである。力は、中心から末端に流すようにつかわなければならない。

この関節の使い方を、徒手での技稽古でもやらなければならない。例えば、四方投げで最後に相手の手が落とせないのは、この法則に反したことをやるからである。掴んでいる手を落とすには、体の中心に近い方から力を出していき、最後に指先に力が集中するようにしなければならない。

手先から力を入れて使うのでは大した力は出ないし、それよりも自然の法則に反しているので、相手は無意識のうちにこれは違うと反抗してくるのだと思う。

技をかけるにあたって使う関節とは、胸鎖関節、肩甲骨、肩、肘、手首だけではない。股関節も重要だし、足にもある。これらもカスを取り、鍛えなければならない。手先と同じように動けるように、鍛えていかなければならない。合気道の稽古は、それができるようにつくられているはずである。

体の各関節を柔軟につかえるようになると、遠心力が出るようになり、そして呼吸力が出るようになる。逆に言えば、関節が硬かったり、十分機能しなければ、呼吸力を出すのが難しいことになる。

今回のテーマは関節である。技が効くためには、関節が重要である。関節が十字に機能するようにできているのだから、十字に機能するように各関節を鍛えることである。各関節が柔軟になると、機能性もより向上するから、そのためにさらに練磨する。
さらに、関節も宇宙の法則に反しないように使わなければならない。
以上が重要であるということであろう。