【第315回】 天のむら雲くきさむはら竜王の働き

開祖は「合気道は天のむら雲くきさむはら竜王の働きであります」(「武産合気」)といわれている。技の鍛錬をしながら精進していくのが合気道であるから、技の鍛錬に、この「天のむら雲くきさむはら竜王の働き」をつかわせて頂かなければならないことになる。

まず、天のむら雲くきさむはら竜王であるが、この神様のお名前は開祖から何度も何度もお聞きしていた。すごい神様だということは想像できても、よくわからなかった。

開祖は、天のむら雲くきさむはら竜王を「いかなる業をも、一瞬にして浄めてしまう神様」と説明されている。これだけでは、この神様の働きをどのように技に活かせばいいのか分からない。

合気道では、宇宙の営みが自己のうちにあることを感得し、そして宇宙と人体は同じものであることを知らねば、合気道はわからないという。

一元の大み親がこの世界を創るについて、霊魂のもとと物質のもとの二元をつくり、これらが天低から地底へ、地底から天低へ、螺旋を描いて常に生命をたどっているといわれる。

また、合気はイザナギ、イザナミ二尊の島生み神生みに基礎根源をおいていて、島生み神生みの神の法則によって、技は生みだされるといわれる。

体の中で最も力が出せるところはどこかというと、腰のはずである。腰の重心移動や遠心力加重力により、さらなる力がでる。

しかし、腰にはさらに大きい働きがあるようである。それは、腰の中のある部位の働きである。仙骨を中心とする螺旋の働きである。仙骨とは、脊柱の一部、腰椎の下方、尾骨の上方にある。

立ったり座ったりする場合、重心を移動させなければ下半身は動かないが、ただ一か所、仙骨だけは動くことができる。仙骨は体の動きの中心であり、初めであると考える。呼吸法(片手取りや諸手取り)でやってみると、分かりやすいだろう。腰を意識してつかうのもよいが、まずはこの仙骨から螺旋でつかい、それに合わせて手足をつかっていくと、呼吸力が増大する。

この仙骨を螺旋につかっていくと、天のむら雲くきさむはら竜王が螺旋で舞い上がり、舞い降りるかのような感じになる。もちろん、「いかなる業をも、一瞬にして浄めてしまう神様」とはならないが、天のむら雲くきさむはら竜王の働きとはこうであろうと思えるはずである。イザナギ、イザナミ二尊とは違う。ザナギ、イザナミ二尊の島生み神生みの神の法則に則ってはいるが、それよりも積極的で強烈なものである。

この体の要である腰の、さらに中心である仙骨を、宇宙の営みと同じに螺旋でつかわなければならないことになるが、螺旋にはいくつかの意味がある。

一つは、力と気持を絡ませながら螺旋につかうことである。仙骨で、気持で力を制御しながら出していくのである。そのためには呼吸が大事である。

二つ目は、仙骨部を十字の螺旋でつかい、力も螺旋で出してつかうようにする。

三つ目は、仙骨部で息も十字の螺旋でつかう。

天のむら雲くきさむはら竜王の働きは、人体において仙骨にあるのではないかと考える。稽古でこれを確認していくことにしよう。