【第308回】 合気道の技とは(3回シリーズ)
その2 技を生み出す仕組みの要素

合気道の稽古は何を最終的な目標として稽古しなければならないのか、考えてやらなければならないだろう。目標がなければ、何をどうやればよいか分からないし、本来の目標とは違った方向へと進んでしまうからである。

開祖は、合気道の修行の目標を我々に教えて下さっている。それに従うのが一番よいだろう。自分でつくってもよいかも知れないが、おそらくうまくはいかないはずである。

開祖は「この山彦の道がわかれば合気は卒業であります」と言われている。山彦の道が会得できれば、合気道の修行は終了である、といわれるのである。山彦の道とは、おそらく開祖が言われている、宇宙と響き合う、つまり宇宙との一体化ということだと考える。

山彦の道、宇宙との一体化のために、前回書いたように、形稽古をし、体の節々をときほぐすのである。固い体では、宇宙との響き合い、交流ができるわけがないので、まずは体を柔軟にすることである。

しかし、体が柔軟になっただけでは、宇宙との一体化はできないだろう。一体化し、宇宙となるためには、宇宙の営みを自分の体で会得し、宇宙に同調して動けなければならないはずであるからである。宇宙の法則、宇宙の条理に則った考えや動きが、できるようにしなければならない。

宇宙の営みに、形稽古を通して自分を入れ込んでいくことであろう。それを一つずつ身につけていくのである。それを開祖は、「技を生み出す仕組みの要素」と言われている。つまり、技を生み出すための仕組みであり、そして技に必要なファクターであるということである。
従って、技を生み出すためには、この「技を生み出す仕組みの要素」を見つけ、身につけていかなければならないことになる。

それでは、「技を生み出す仕組みの要素」とは何か、ということになる。開祖は、「円を五体の魂におさめると、技を生み出す仕組みの要素を生じます」と言われている。まず、形稽古で円の動きをし、そして円のめぐり合わせで、心体を使うことである。縦の円と横の円のめぐり合わせである。円とは|(縦)と―(横)での円 である。そして円には縦のものと、横のものがある。この二つの円がめぐり合わなければ、技は生まれない。
|と―で動くのは手だけではなく、腰腹、足づかいでも同じである。

ここで開祖は、また技に関して重要なことを言われている。一つは「技を生み出す仕組みの要素」があること。二つ目は、「技を生み出す仕組み」があること。三つ目は、そのためには「円を五体の魂におさめなければならない」ということである。これらのことをしっかりと肝に銘じて、稽古をしていかなければならない。

この技を生み出す仕組みの要素をつかって、相対で稽古をするようになると、これ以前の形稽古とは違った稽古になる。相手がくっつくようになり、相手と一体化するようになる。形稽古では、相手は別人であり、時として敵になるが、くっつく段階では、相手は自分の分身となる。自分の思うように動いてくれるのである。

宇宙との一体化の前哨戦として、相対稽古の相手と一体化することである。稽古相手とも一体化できなければ、宇宙との一体化などできるわけがないだろう。

技を生み出す仕組みの要素を生じさせていけば、そのうちに技が生まれることになるだろう。ただ、本当に技が生まれてくるのか、いつ生まれてくるのかは、今のところ残念ながら分からない。

次回は、技とは何かに挑戦してみることにする。