【第304回】 小宇宙になるために

前回の第303回は「人は小宇宙」というテーマだったが、今回はその続きで、「小宇宙になるために」というテーマで書いてみる。今回も前回もまだまだ試行錯誤で、研究途中のものだが、敢えて挑戦してみることにする。

合気道は、宇宙との一体化、宇宙万有の活動と調和する修行の道であるが、開祖は「この私の中に宇宙があるのであります。すべてがあるのであります。宇宙が自分なのであります。宇宙そのものであります。」と言われており、我々稽古人にも宇宙になるように促されている。開祖は、そのため非常に難解ではあるが、数々のヒントを残して下さっている。

例えば、「自分を知るということは宇宙を知ることになるのです」と言われているから、宇宙を知るためには、まず自分を知るようにしなければならないのである。

人は、自分を知っているつもりでいるが、よく考えてみれば、ほとんど分かっていないことに気付くはずである。どのくらい分からないかというと、宇宙が分からないと同じ程度にしか分かってないと言ってよいだろう。

自分を知るためには、まず身体の各部と対話できるようにしなければならないだろう。また、いつものお働きにお礼を申し上げなければならないだろう。

それができるようになったら、自分の身体と心を宇宙の心と同調するようにしなければならないだろう。そのために我々は合気道をしているはずである。技の練磨によって、宇宙と結び、一体化しようとしているはずである。

開祖はそれを、「念を五体から宇宙に気結びすれば、五体は宇宙と一体となって、生滅を超越した宇宙の中心に立つことも出来る。これが武道の奥義である」と言われているのである。

宇宙と結ぶ、宇宙と一体化する、宇宙の中心に立つ等が、合気の道の頂点であり、悟りということになるようだ。

そのために開祖は次のようにしなければならないと言われている。
「宇宙の妙精悉くを受け止めている引力の持ち主が、人なのである。人は大地の呼吸と潮の干満を血行にうけとめているのである。大地の呼吸と共に、天の呼吸を受け、その息を悉く自分の息にして息と息とに同化し魂魄を正しく整えるのが人である。即ち人は全大宇宙を受け止める一ケの経綸の主体となっている。」

まず、引力の養成である合気道によって引力を身に着け、大地の呼吸と天の呼吸に自分の息を同化する。天地の息に自分の心体を合わせて動けるようになれば、大宇宙と小宇宙がひとつになるわけだから、人は小宇宙ということになるだろう。

つまり、技の練磨を続けていけば、自分が小宇宙になり、大宇宙と交流ができる人になれる、ということではないだろうか。技の練磨あるのみ、ということだろう。