【第295回】 足裏三点

合気道は、稽古相手と技を掛け合って、技を練磨し精進していく。初心者の内は、技は手で掛けるものとばかり、手を全面的に信頼して、足など他の部位はあまり気にも留めずに動き回るものである。

しかし、その内に手の働きも大事であるが、足の重要性にも気がついてくる。足がどれだけ重要であるかと言うと、極端に言えば「技は足で掛ける」ということだからである。体重を活用して掛けるのが、技の効率がよいからである。

体重は地球の引力の関係で、原則的に真下に落ちる。この力は天地間を縦に働くわけである。

同様に縦の体重を持つ相手を、技で崩したり制するのは、横に力を使わなければならない。自分の縦の体重を横に使って、相手の縦の重力を動かすのである。この縦の力を横の力に変えるのに、大事な働きをするのが足なのである。

足を使うにしても、足をただ使えばよいということではない。日常的な使い方をすれば、日常の歩行となり、自分の体重を乗せたり、支えたり、移動はするが、自分の体重を活用するような歩行はできない。

手先に大きな力を集めて使うためには、体重を足裏に集め、この縦に落とした体重を足裏で横に変えるのである。

どう変えるかというと、踵に下ろした体重を、小指の付け根にある小指球に移動させ、そして親指の付け根にある拇指球に移すのである。つまり、縦の体重を、踵、小指球、拇指球と横にアオルのである。

拇指球に体重が乗ったところで、反対の足が撞木で進み、踵が着いて(縦)、踵、小指球、拇指球とアオッテ(横)いくのである。

従って、足裏の踵、小指球、拇指球の三点が特に重要になる。これらの一点でも弱かったり、使われなかったりすると、力が創出されず、技もうまく効かないことになる。ほとんどの場合、足の外側(小指側)に体重が逃げてしまうようだ。

腰腹と足がしっかり結んで使われるためには、手と同様に足裏が面(めん)になっていなければならない。指先が丸まったり縮んでいると、それができない。とはいっても、足裏を面にして使うのは意外と難しいものである。

面にするためには、踵、小指球、拇指球、およびその三点を結ぶ線部が張っていなければならない。これが弱いと、しっかり床に着かず、足からの抗力が返ってこないことになる。つまり、指先がちぢこまり、足と腰腹が結ばれずに膝と結ばれてしまうので、膝を痛めることにもなりかねない。