【第290回】 天之浮橋(道歌4)

開祖は、合気道の技の練磨をするためには、まず天之浮橋に立たなければならないといわれた。そして、その天之浮橋を「丁度魂魄の正しく整った上に立った姿です。これが十字なのです。」などといわれていたが、当時は天之浮橋とはどういうものなのか全然理解できなかった。

しかし、開祖が天の浮橋に立たなければ合気道の技を遣えないし、技の練磨もできないといわれているのだから、合気道を修業する者は何とか身につけなくてはならない。

最近、開祖がよくいわれていた天之浮橋が解らなければ、確かに技を身につけていくことはできないということが解ってきた。例えば、天之浮橋は十字であるといわれるように、手足の五体を十字につかっていかなければならないし、体力や魄力に頼んでやっても限界がきてしまう。やはり体と心の魂魄がバランスよくつかわれなければ、技も効かないし、日常生活にも問題を起こすことになるようだということがはっきりしてきた。

開祖は、悟らなければならないことや奥義などの大事なことを道歌に歌われているので、この天の浮橋を道歌で探してみた。すると、五首の道歌に詠われていた。これでも天の浮橋は重要なことがわかるし、絶対に身につけなければならないこと、避けて通れないものだということがわかるだろう。

天の浮橋を読んだ道歌で、「天の浮橋」とは何かを研究してみることにする。

天地の 精魂凝りて 十字道 世界和楽の むすぶ浮橋
試訳:天地は精魂が十字に満ちており、十字道(合気道)は世界を和楽に結ぶ この十字の天之浮橋の上に立たなければならない
天の浮橋は、十字である

いきいのち 廻り栄ゆる 世の仕組 たまの合気は 天の浮橋
試訳:生き死にを繰り返して、螺旋で完成を目指す世の仕組みを成すのは、天の浮橋に立つ魂の合気である
天の浮橋で、魂の合気ができる

むらきもの 我れ鍛えんと 浮橋に むすぶ真空 神のめぐみに
試訳:懸命に鍛えようと天之浮橋に立ち、真空の気と結べば、神様が恵み(教え)を下さる
天の浮橋で、(空の気を離脱して)真空の気と結べる

世の仕組 国のみ親の 命もて 勝速日立つ 天の浮橋
試訳:世の仕組みを整えるために国づくりの神様のご命令を持って、時間を超越した速さ「勝速日」が立つのは天の浮橋である
天の浮橋には勝速日(時間を超越した速さ)がある

みちたりし 神の栄えの 大宇宙 二度の岩戸は 天の浮橋
試訳:神の栄で満ちている大宇宙は、天の浮橋で二度目の岩戸開きとなり、魂が表になる世になる
天の浮橋で、岩戸開きができる

これらのことから、天の浮橋とは、一言でいえば、「バランス」ということになると考える。上下、縦横、魂魄、八大力等などのバランスが取れていることや所ということであろう。

バランスを取るために、天の浮橋に立って稽古をし、十字を身に着け、真空の気と結び、勝速日を会得し、岩戸開きをして、魂を表に出す修練をしていくことである。