【第282回】 入身(いりみ)、転換

「入身転換の法を会得すれば、どんな構えでも破っていける」と言われるように、入身と転換は合気道では重要である。

はじめて入身と転換が重要だと聞いた時は、「入身投げ」とか「転換法」等を数多く稽古すればよいのだろうと思ったものだ。しかし、「入身投げ」を初心者が稽古するのを開祖はあまり喜ばれなかったこともあり、入身とはどうも「入身投げ」の入身ではないということに気がついた。

入身とは、身を入れるということである。入り身の目的は、攻撃してくる相手と結び、和合することである。相手と和合するために、相手の死角に身を入れたり、相手の中心に身を入れるのである。

入身をしない場合、相手とは和合しないので、相手を弾いたり、引っ張ったり、押しつけたりすることになり、争いになってしまうはずである。

それ故、入身は「入身投げ」での入身だけではなく、すべての技で必要になる。片手取り、正面打ち、横面打ち、胸取りはもちろんのこと、坐技の呼吸法でも、入身がないと相手と和合もしないし、技にならない。だが、坐技呼吸法での入身は容易ではない。腰がかたければ、身が入らず、手先しか動かないので、入身にはならず、押しくら饅頭(おしくらまんじゅう)になってしまう。

転換は、入身で結んで和合した相手を、自分の円の中に取り込むことと言えるだろう。転換とは、方向を変えることである。相手と結んだら十字に方向を変え、まず相手と自分の共通の円(接線)を進み、そして自分の円に取り込んでいくのである。

ただし、転換するのは体だけでなく、気持(心)も一緒に転換しなければならないのだが、これが簡単ではない。気持が相手や相手が接している箇所に、居着いてしまいがちになるからである。意識して、繰り返し稽古をするほかはないだろう。

合気道の技の鍛錬は、相対稽古で攻撃をしてくる相手である他人と結び、二つの物体が一つに和合し、一体化して技を生成化育していくものであろう。そのためには、この「入身、転換」は合気の基本であり、不可欠である。

合気道は、△○□(三角、円,四角)とも言われるが、入身は△、転換は○、そして技に収まったところが□ということになるのではないかと考える。