【第272回】 手と腰腹を繋げて遣う

合気道は、相対稽古で技を掛け合い、受けを取り合って、技を練磨し、体をつくっていく。合気道の基本技はそれほど多いものではないので、その基本技を、取り(攻撃法)や掛け(攻撃人数)を変えながら、何度も何度も繰り返して稽古することになる。同じ事を繰り返すので、稽古年数が増せばそれだけ技が効くようになるはずだが、そうは問屋が卸さないのが合気道の奥深さである。

技は主に手で掛けるが、手で掛けては駄目なのである。このジレンマが面白い。まるで禅問答みたいである。多分、禅の大家であった鈴木大拙師だったと思うが、合気道は動く禅と言われたと聞いているが、こんなところも動く禅ということになるのかも知れない。

技を手で掛けるというのは最後の動作であって、手で掛けては駄目だといっているのは、最初の動作であってはならないということである。

末端の手の力というのは、体の中心の腰腹の力に比べれば、想像以上に弱いものである。だから、力の出る腰腹の力を遣わなければならない。そのためには、この腰腹の力をいかに手先に集めて、手で遣えるようにするかが重要になる。

まずそのためには、手と腰腹が繋がっていなければならない。合気道的に表現すれば、手と腰腹が結ぶということになる。

しかし、これがまた容易ではない。よほど注意して稽古をしていかないと、手が優先する手捌きになってしまい、手と腰腹がバラバラに動くことになる。手と腰腹がバラバラに動くと、手に腰腹の力は伝わらず、手だけの力しか遣えないことになる。

次に、手と腰腹を結んだら、腰腹を遣って、手を遣うことである。つまり、まず体の中心を動かして、その結果、末端の手が動くようにするのである。

技を遣うにあたって、この二つのことはMUSTである。技がうまく掛からない場合、特に、初心者は手と腰腹が結んでないので、末端の手から動かして技を掛けているはずだ。これは、合気道に限ったことではない。踊りや仕舞などの芸能、野球やゴルフのスイングなどでも同じである。下手な人は手先が腰腹と結んでないし、手先から先に動かしている。上手な人は腰腹からの力を背中(脊柱)、肩甲骨、腕、手先へと流していく。

まずは、手と腰腹をしっかり繋げ、腰腹から動かすようにしてみたらいいだろう。