【第269回】 宇宙の法則 螺旋

合気道の最終的な目的は、宇宙と一体化することだという。そのためには、宇宙を知っていかなければならない。しかし、宇宙は大きすぎて知りようがない、というのが現状である。誰も宇宙はこれだと示してくれたり、宇宙の意志や営みはこうだとは教えてくれない。そうすると、自分で一体化すべき宇宙を知っていかなければならないだろう。

ありがたいことに、合気道の技は宇宙の営みを形にしたものであると言われるわけだから、技を練磨していけば、宇宙の営みが分かるはずである。そして、それが分かれば、宇宙の法則が分かり、宇宙が分かるのではないかと考える。

それ故、宇宙の法則にはどんなものがあるのか、研究すべきであろう。技を通してその法則を見つけ、その法則が他の技や他の稽古相手にも有効で、他の動物や植物、自然など考えられる万有万物に適合するならば、それは宇宙の法則といえるのではないだろうか。

宇宙の法則は無限にあるだろうが、今回は「螺旋」という宇宙の営みが宇宙の法則の一つであろうとの考えを書いてみる。

万有万物の多くが円の営みをしているといえるだろう。星は自転したり、他の星の周りをぐるぐると円く動いている。地球は自転しながら太陽を365日で一回りし、月は地球の周りを27.32日で自転し公転している。

地球上の人や動植物は、一年365日を繰り返しながら生存している。人は朝起きて、昼間は活動して、夜は寝るの一日24時間を繰り返している。

しかし、宇宙の営みは、円だけではないはずである。なぜならば、円ははじめのスタート時点から出発して終点にくると、はじめのスタート時点に戻ってしまい、何度ぐるぐる回っても変化も進歩もないからである。

万有万物はあるものに向かって生存しているように見える。人は毎日24時間、一年365日を繰り返し生きているが、誰でも例外なく、少しでもより満足できるようにしたいと思っているし、今より少しでも良くなるだろうと期待している。それが証拠に、誰もが殺されることを否定する。もし、円の営みをしているなら、今日も明日も10年後も同じことの繰り返しだから、死んでもいいと思う人が沢山いてもいいのだが、誰もが死を避けようとする。人だけではなく、犬や猫や猛獣でも殺そうとすれば、生きようと反撃してくる。

これは円ではなく、螺旋で生きているからといえるだろう。螺旋なので、同じ一日でも昨日の一日とは違うし、来年、10年後はどんなに違うのか楽しみで生きているのである。今殺されてはその楽しみや希望が消えるので、死を拒否するし、死を怖がり、死を悲しむのであろう。

植物でも、葉は、茎にそって螺旋階段をのぼるように生えていくし、松ぼっくりやパイナップルやイチゴなどの集合果の小さな果実一つ一つは、表面に螺旋を描くように配列している。(「ニュートン」2010.3)

合気道でも、技は「円のめぐりあわせ」であるが、この円を螺旋でつかっていかなければならない。手を螺旋でつかわなければ、折れ曲がってしまうし、体幹からの力も出せない。体も横と縦の円の組み合わせで、螺旋でつかわないとうまく技が効かない。

また、稽古も螺旋の稽古をしていかなければならない。合気道はそれほど多くない基本技(形)を繰り返し稽古するが、円の稽古の繰り返しでは進歩がない。同じ技や稽古の繰り返しでも、昨日より今日、今日より明日が少しでも上達するように、螺旋の稽古をしていかなければならない。

人も万有万物、すべて螺旋の営みをしていると見る。これが宇宙の営みであり、宇宙の法則の一つと言えるのではないだろうか。