【第248回】 体のクッション

合気道は技の練磨をしていくものであるが、体が自由に動かなければ、技もそれ相応にしか遣えない。体が自由に動くためには、骨や筋肉を強靱しなければならないが、まず体のカスを取って、柔軟にしていかなければならない。しかし、強靱にしながら柔軟にしなければならないわけだから、容易ではない。容易ではないというのは、ただ稽古をして体を遣っていればよいということではないということであり、体の遣い方を考えて稽古しなければならないということである。

人はどうしても錯覚に陥り易い。それは物事を自分の都合のいいように解釈するからだと思う。稽古も然りである。多くの錯覚をもって稽古をしていることが多い。例えば、稽古をやれば体は鍛えられて、健康になるし、技も上手くなるということである。ただ稽古しただけで、体が鍛えられたり、健康になったり、技が上達することはないといってよいだろう。もしそれで希望通りになったら奇跡である。体を鍛えたければ鍛えるように、健康になりたければ健康になるように、また技が上達したければ上達するように、稽古しなければならない。

合気道は引力の養成であるとも言われるように、攻撃してくる相手をただ弾き飛ばすのではなく、先ずはくっつけてしまわなければならない。そのため引力を強めていかなければならないが、体の遣い方で相手をくっつけるようにしなければならないだろう。それには、体のクッションを遣うことである。クッションによって相手がくっつくだけでなく、体の安定性をはかれるし、体から大きな力を出すこともできるのである。

稽古を通して、また四股を踏んでいるとよく分かるが、体のクッションとなる主な部位としては、

があると思える。

この各々の部位が独立してクッションになるが、これらが連動してクッションになれば、さらに大きな仕事ができることになる。

おそらく昔の忍者や泥棒は、これらのクッションが優れており、抜き足差し足などお手の物だっただろう。

これらの部位のクッションの機能を少しでもよくするように鍛えることが、大事である。年を取って何もしない人は、まずこの部位にカスが溜まって機能しなくなり、体が固まり、動かなくなっているように見える。町を歩く後期高齢者を見れば、それがわかるだろう。

子供や若者はこれらの部位がよく動くので、体が自由に素早く、そして大きく動けるのである。体が若いというのは、この体のクッション部位が柔軟に機能するということが言えるかもしれない。

年を取るからカスが溜まって動きが悪くなると諦めないで、カスを取って若々しく稽古をし、生活した方がいいだろうし、そうすべきである。