【第234回】 円転の理

合気道の技は、宇宙の営み、宇宙の法則、宇宙の条理を形にしたものであるといわれる。宇宙は時間的、空間的に無限と思われるので、その営みや法則や条理も無限近くあるはずであるが、その中の一つに「円転の理」というのがあるだろう。なぜならば、合気道の技はこの「円転の理」なくしては機能しないからである。

合気道の技は直線的ではない。円である。たとえ直線的に見えても、円の一部のはずである。何故ならば、技を掛ける部位(例えば、手や肩や胸)は腰腹などの中心と結んでいるので、必ずその部位と中心の腰腹を半径とする円の軌跡になっているからである。

合気道の技は、まず自分の円と相手の円の共通する円周を経て、自分の円に取りこんでしまうのである。しかし、技が上手くかかるためにはその円だけでは不十分で、もう一つの円が必要である。

いうなれば、前者の円を「平面の円」または「横の円」とすれば、もう一つの円を「垂直の円」または「縦の円」といえよう。ここでの「縦」「垂直」とは、手を伸ばした時の指先方向をいい、「横」「水平」とは「縦」「垂直」と十字に交わる直角方向を言っている。

「縦の円」は、指、手首、肘、肩、胸鎖関節を中心にしてできるもので、ここを中心にぐるぐる回すことができる。

「横の円」は、四方投げや入り身投げなどで、一般に円く腕で捌く円である。この円で捌くのも簡単ではないが、もっと難しいのは「縦の円」である。

「横の円」は、主に相手を誘導するものだが、「縦の円」は相手をくっつけたり、崩したり、相手の力を抜く働きをするといえよう。

また、「縦の円」のもう一つの特徴は、十字々々と反わる螺旋であるということである。従って、この「縦の円」が上手くできなければ、相手をくっつけたり、崩したり、相手の力を抜くことはできないことになる。

合気道の技は、この「横の円」の軌道上を、「縦の円」が十字々々で反転していくということではないだろうか。とすると、これはまるで太陽の周りを公転し、かつ自転している地球でもあろう。ということは、この「円転の理」は宇宙の法則に合致していることになるだろう。