【第226回】 十字の稽古
合気道は十字道とも言われるというように、合気道の技は十字で掛かるようにできている。十字は自然であり、宇宙の条理に則った法則である。なぜならば、合気道の技は宇宙の法則、宇宙の営みを形にしたものであるからである。合気道の技を身につけることにより、宇宙の法則を体に取り入れ、宇宙と一体化していくのが合気道であろう。
十字を自覚し、体に取り入れるには、合気道の技を通すのが最も容易であると思う。正しくやれば、老若男女だれでもそれ相応にできるだろう。
6月にフランスの講習会でやった稽古のテーマのひとつに、「十字の体遣い」があるが、そのときの2時間の稽古プログラムを紹介する。
- 準備運動:十字で円になることを説明。手首、肘、肩、胸鎖関節を支点に十字から円で回す運動をする。
又、体は立った場合も十字、手の関節も体の各部位はお互い十字に機能するように出来ている。
従って、自分の体と相手の体を如何に十字に扱うかが、技が上手くいくかどうかに関わってくることになる。
体の関節などの各部位が十字に動かなければ、そこにカスが溜まっていることになるので、そこのカスを除いていかなければならない。
- 片手取り転換法:手の平を垂直の状態(剣を握る状態)から手の平を90度反しながら転換する。手の平は上になる。手の平は縦から横の十字になったことになる。
- 片手取り呼吸法:手の平を床と垂直にして持たせ、手の平を上にしながら90度反し相手を引き出す。そこで、手の平を垂直に立て一教運動で横の動きを縦にし、今度は手の平を下に向けながら相手の首を切るつもりで切り下ろし、手の平は90度反るが、相手を飛ばさないで自分の腹の下に崩す場合は、手の平を垂直にする。
片手取り呼吸法では、手の平は90度、90度、90度、90度、90度と反ることになる。
- 片手取り(逆半身と相半身)二教:相手の手首を十字にしないと極まらない。
- 片手取り四方投げ:相手の持った手と自分の手が十字になるようにする。手の平は十字、十字に反しながら遣う。また、平行には進まず、相手の手と十字を保つように進む。
- 正面打ち入り身投げ:手の平と腕を十字十字に反しながら遣う。手の反しと体の動きがひとつにならないと技は極まらない。
- 天地投げ:水平の出した手から、反対の手を入り身しながら垂直に下ろし、腰が横に転換、腕が垂直に上がり、肘を水平に相手にぶつけ、腕を上にあげて、横に動いて、手で相手を切りおろすと、十字十字で動かないと上手く極まらない
- 横面打ち(隅落とし、四方投げ、一教、二教):特に大事なのは、相手が横面で打ってくる手を直角で抑え、そして手の平が相手の手に触れるように90度反し、相手の手をくっつけてしまうことである。くっつけたところから、手の平を90度反して落とせば隅落とし、180度返せば四方投げ、自分の他方の手と十字にすれば一教、二教に入れる。
- 坐技呼吸法:前(横)に腰から力を出し相手と一体となったら、腰を横(前に対して十字)に振り、そこから上にあげ、横に振りながら下に落とす。
つまり、前、横、上、横、下と十字十字で反っていなければならない。
今回は、手の十字を中心にやったが、足、体も十字に遣われなければならないし、手、足、体が一体化して遣われなければならないので、手の十字だけでは不十分である。しかし、一緒にやるとますます分からないだろうし、手の十字が分かれば、他の部位の十字の遣い方も分かりやすいだろうから、手の十字だけをやってみた。
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