【第221回】 宇宙一家の一貫性

世の中、つまり地球も宇宙もだが、あるものに向かって進んでいるようだ。地球楽園、宇宙完成を目指し、生成化育しているのだ。そして、この世に出現したありとあらゆる万有万象は、生物であるなしに関係なく、そのお手伝いをするための役割を担い、分身分業をする一家であるといわれる。それを開祖は、「うるわしきこの天地のみ姿は 主のつくりし一家なりけり」と詠われている。従って、虫一匹殺しても、天の星が一つ落ちても駄目であると言われている。

ノーベル平和賞候補にあがった未来学者、システム哲学者であるアーヴィン・ラズロ博士は、合気道で言う宇宙一家を、「宇宙は、そのなかに存在するすべてのものと共に、生物にも似た一貫性を持つ一つの総体をなしていて、宇宙に存在するすべてのものは互いに結びついている。わたしたちは、お互いの、そして自然の、一部である。わたしたちは、一貫性をそなえた世界の、一貫性をそなえた一部である。その点に関しても人間も、一個の素粒子、恒星、銀河とまったく同じだ。それらとわたしたちとの違いはただ一つ、わたしたちは、世界の中の意識をもった一部、これを通して宇宙を自らを知るようになる一部であるという点だ。」と言っている。(『生ける宇宙 ― 科学による万物の一貫性の発見』アーヴィン・ラズロ著)

ラズロ博士がいう一貫性とは、開祖が言われる「一元の本」「一元の大御親」と繋がっているということであろう。開祖は、すべてのものはこの「一元の本(大御神)」に繋がっていなければならないのだから、「一元の本(大御神)」を忘れてはならない」とよく言われていた。

また上記のラズロー博士の著書のなかで、「イギリスの物理学者クリス・クラークは、『宇宙全体は、絡み合った一つの量子系である。これまでもずっとそのような状態にあったし、今後も常にそうであり、完全に一貫性を保ち続けるだろう』と断言した。」と述べている。
さらに、博士は、「最先端の生物学者や生物物理学者たちが、生命体は、およそすべての分子、細胞、器官が、ほぼ瞬時に成り立つ結びつきによってつながった、驚異的な一貫性をもつものだということを見出している」とも書いている。

開祖もラズロ博士も言っているように、宇宙に存在するものはすべて一貫性のある宇宙一家であると考えれば、その一貫性と統一を乱すことは、宇宙生成化育を乱すことであり、開祖がいわれるように大罪ということになる。人間同士の争い、他の動物の虐待、地球破壊、大気汚染等などは、宇宙的規模の罪ということになる。

合気道の技を練磨するに当たっては、この宇宙の一貫性を乱さないことが重要になろう。相手と争ったり、怪我をさせるのは、もちろん罪になるが、宇宙生成化育に反することをやれば罪になる。合気道の技は、宇宙の法則に則ってつくられているものなので、宇宙の法則との一貫性をもつように、技を遣ったり、体を遣う稽古をしていかなければならないことになるだろう。

掛けている自分の技が、宇宙の法則に則っているかどうかを判断するのは、難しいかもしれない。よほどの名人・達人が見てくれないと難しいだろうが、その名人・達人がいつも身近にいて判断してくれることもないだろうから、自分自身で判断するしかないことになる。

ありがたいことに、前述のように、宇宙に存在するものはすべて一貫性をもって結び合っており、自分と地球や宇宙も繋がっているという。だから、自分が技を掛けて気持ちよく感じたことは、宇宙も心地よいはずだし、自分で十分満足できなければ、宇宙もそのはずだから、自分が満足できるように稽古をしていけばよいことになるだろう。これが開祖が言われている、「宇宙の中心に立たなければならない」ということなのかも知れない。

技を掛けるのも、宇宙のあらゆるものと瞬時に一貫性を持つわけだから、宇宙生成化育を乱すという罪を犯さず、宇宙生成化育に少しでも役立つようなものにしていきたいものである。