【第209回】 足首とくるぶし

武道には技はあるが、その技を上手く遣うためには、体を最大限に遣いこなさなければならないことになる。とりわけ合気道には、何万という技があると言われているし、攻撃(取りや掛け)に制限もないわけだから、体を余すところなく遣えるようにしなければならない。

人の体は宇宙と比較されたり、宇宙・小宇宙であるともいわれるぐらいだから、人の体も無限とみることができ、尽きない研究をしなければならないことになるだろう。

そこで、今回は「足首とくるぶし」を研究してみたいと思う。足首は捻挫でもしないとあまり意識されないようだが、どうも重要な部位のようであり、研究しなければならないもののようである。

足首とは、すねの最下部、くるぶしの周辺をいう。足首は、自分のほとんどの体重を支えるので、稽古で動きまわるためにも、また普通に歩くためにも重要である。

合気道の技の稽古で大事なことの一つとして、技は足で掛けるといってよいほどに、足の遣い方は大事である。初心者は手の遣い方は大事にするが、足の遣い方までは気が回らないようだ。実際、四方投げや二教を掛けても、手だけでは掛かりにくく、やはり足に全体重をのせ、その体重移動した足からの力を遣わなければ、大きな人や体力のある人には掛かりにくいものである。

技をうまく掛けるには、自分の体重を上手く遣うことであるので、体重移動が重要である。足には、体重移動をするのに、次のような二つの役目がある。

一つ目の体重移動は、二本の左右の足に交互に移していくことである。合気道の技は、必ず足が交互に動かなければならないようにできているはずである。その左右に動く足の上に、体重を移動して行くのである。

二つ目の体重移動は、足首で行うものである。くるぶしを中心にして、足の前後への体重移動である。足全体に体重をのせて動くのでは、ペタペタ、バタバタのいわゆるベタ足となってしまい、体重ものりにくい。

まず、足首での前後の重心移動であるが、足を踵から床に接し、内外のくるぶしを結んだ線を支点として、土踏まずから足先の拇指球や小指球へ体重を移動する。この体重移動は、例えば、四方投げで転換して相手を投げるとき等に遣うものである。尚、入り身をする場合はこの逆で、先ず、拇指球や小指球から着地し、くるぶしの線上に体重をのせて転換し、踵に体重を移動していく。

二つ目の足首での重心移動は、左右である。両くるぶしを結んだ線上に体重を掛けて移動するものである。撞木で歩を進めるときには不可欠であろう。ということは、くるぶしで前後左右に十字に動くようになっているということだろう。

合気道の体遣いとして足首は大事であり、また足首にあるくるぶしの働きが重要であるようだ。くるぶしは内と外に出っ張って得意そうな姿をしているが、やはりそれなりの意味があるようだ。

くるぶしが支点となって、足は前後(上下)に動く。つまり、両くるぶしを支点として、爪先が上がれば踵が下がるのである。また、横に内旋・外旋したり、足の脛が左右横に倒れる場合も、このくるぶしの線上を動くようである。従って、体重の足首での移動は、くるぶしを支点に十字になっていることになろう。

支点となってスムースに動くために、くるぶしの周囲には滑液包といわれる液体を包んだ袋があり、この部位の骨と靭帯や筋肉との摩擦を減らし、スムースに動かすための潤滑油の機能をしているのである。捻挫などすると、この滑液包が炎症をおこし、水がたまったりして腫れるようだ。そうならないためにもくるぶしの十字で体重移動をするなど、足首とくるぶしの働きを再認識して、体を遣っていってはどうだろうか。