【第190回】 骨盤を意識する

合気道は技を磨いて精進する道であるが、技をうまく遣うのは容易ではない。やるべきことがあるし、それを地道にひとつひとつ順序良く身につけていかなければならないからである。近道もなければ、飛び越えていくことも出来ない。
合気道の稽古は、最初は合気道の体をつくることである。まず、技の型ができるよう、受け身が取れるような体にすることであるが、次は、間接や筋肉のカスをとることである。特に、手頸、肘、肩、肩甲骨、股関節、そして骨盤である。
これらの関節とそのまわりの筋肉のしこりが取れて動くようになれば、あとはそれを如何に上手く遣うかということになろう。

今回は、その内の「骨盤」の重要性と遣い方を考えてみたいと思う。

技を遣うに当たって重要なことは、力を出力する元はどこかを知ることではないだろうか。それがわからなければ真の力はでないし、違うところから出すことになってしまい、質の高い力は出ないことになるし、下手すれば体を痛めることになるだろう。

武道では、力は腰とも腹ともいわれるが、力は体の中心の腰腹のあたりから出ると考えてよいだろう。さらに、力を出せるのは、骨と筋肉の両方から出来ているところでなければならないだろう。とすると、腰ということになる。腹には骨はないし、どんなに頑張っても骨と同じようにしっかりした筋肉はできない。また、腹は体の「裏」であるので、「表の」腰を遣わなければならないから腰でなければならない。

腰で骨と筋肉が集まっているところは「骨盤」である。解剖学的に、骨盤は、
@体の中心に位置し、背骨を支える
A腹部の内臓を保護する
B上半身と下半身を繋ぎ、体を安定させる
といった、三つの主な働きがある、と言われている。特に、武道で関係があるのは@とBということになろう。従って、「骨盤は人間の体を支える“土台”としての働きをしている」ということになり、体の中心ということになるだろう。体の中心であるから、ここからの力が末端にいくことになるのである。

骨盤は、上半身とは腹直筋と脊柱起立筋でつながり、下半身とはお尻と太ももの筋肉でつながっている。それで、体のバランスを取り、歩を進める際の大きな役割をしているのである。

体のバランスを取ったり、技を掛けたり、歩を進める際は、骨盤を意識して力を出したり、動くといいようだ。それがよく分かるのが、「四股」である。別の箇所を意識したり、力を入れればふらついてしまうが、骨盤に意識と力を込めると、安定して足が上がる。

別の例としては、「坐技呼吸法」である。両手から出す力は、やはり骨盤から出さなければならない。袴の腰板は骨盤を意識するためにあるのではないかと思える。

先ずは骨盤の重要性を再認識し、骨盤を意識して稽古してみるのがよいだろう。