【第19回】 腹を練る

合気道の稽古をしていれば自然と腹が練れるようになってくる。技をかけあったり、受身をとったりしている内に、自然と腹がしっかりしてくるものである。 腹が出来てきたかどうかを見分ける簡単な方法は、帯のすわり具合であろう。 初心者の内は、帯をきっちり締めて稽古にのぞんでも、稽古中や終わったときに帯がへその上に上がってきてしまう。それも、段が上がると共に帯がへその下、つまり下腹におさまるようになるものだ。

武道にとって腹は大切な部位である。ここがしっかりしていれば、体も出来てきたことになろう。

腹を練って、しっかりした腹をつくるには「脇を締めろ」と故有川師範が稽古時間で言われていた。「脇はかならず締めよ、そうすれば腹が締まり体ができる。」(1999年5月26日)

この日に脇を締めるために故有川師範が稽古した技は、両手取り呼吸法、正面打ち一教、同二教、同入り身投げ、横面打ち入り身投げ、同四方投げ、同小手返し、同腕がらみ等であった。師範はこれらの技を、当日の脇を締める稽古に選ばれたわけである。師範の稽古は、合気道の体をつくるため、体の各部を分割して、その部位を鍛えたり、機能アップする目的をもったものであった。

故有川師範の体の使い方を思い出すと、確かに脇をしっかり締めておられた。正面打ちの場合でも脇を締めてヒジから打つようにされていたし、脇をしっかり締めて諸手取りの呼吸法をやったり、また、最も特長的なのは入り身投げで相手の顎に腕をかけるとき、ヒジが相手の顎にぶつけるように脇を締めて相手を倒されていた。

稽古の後よく食事をご一緒させて頂いたが、私や他のものが先生のカバンをお持ちすると、先生はカバンを持つのはいい稽古になるといわれていた。今思えば、カバンを脇を締めて持てば腹が練れて、腹が出来るようになるということだったのだろう。

腹を締めたり、練って腹をつくるのを意識してできる稽古はなかなかないものだ。先ずは脇を締めて、腹をつくってみよう。特に二教の裏で手首を効かす鍛錬稽古は、脇を意識して締めれば、腹を練るのによい稽古になる。