合気道の稽古は、主に二人一組になってする相対稽古である。お互いが平等に右、左、そしてその裏、表と4回づつ技を掛け、受けを取る、を繰り返して稽古する。段が上であろうが、下であろうが、上手かろうが、下手であろうが、4回(技によって変わる場合もある)技を掛ける権利がある。非常に平等、公平な民主主義の稽古方法であり、素晴らしい稽古方法であると思う。
しかし、合気道の根本理念にあるように、物事は必ず両面あるもので、この素晴らしい稽古法の中にも、問題を含んでいるのである。従って、その問題を見極め、その問題を取り除かないと、その素晴らしい相対稽古がマイナスに働くことになってしまうことになる。つまり、上達を阻害することになるわけである。
相対稽古の問題となる落とし穴は、稽古の対象が相手になってしまうことである。相手を意識しすぎ、相手をなんとしても決めようとか、投げようとか思うあまり、自分の姿勢を崩したり、動き(業)を乱したり、手足をバラバラに遣ったりしてしまうのである。そうなると、肝心なことである、手先がまっすぐになるようにするとか、腕を折れないように遣うとか、入り身と転換をきちんとやるとか、手は体の中心で遣うとか、手と腹を結んで遣うなどなどの基本的な体遣いや動きを忘れてしまうのである。
また、例えこの問題に気がついて、そうならないようにしようとしても、相手にそれを阻止されたりするので、相対稽古ではなかなか思うようにはいかないのものなのである。
基本的な体遣いや動きが出来なければ、技が上手く掛かるわけがない。もしそれで相手が倒れたとしたら、力で押しつぶしたか、または相手が倒れてくれたかのどちらかであるはずだ。
基本的な体遣いや動きができなければ、出来るようにしなければならない。そうしなければ先へ進めない。
基本的な体遣いや動きを身につけるには一人稽古、単独稽古がいい。
開祖晩年の頃の稽古時間では、必ず下記のような「基本準備動作」をやったものだ: