【第188回】 末端を大切に

技を掛けるにあたっては、力は手先から出すものではない。その対極にある腰腹や足から出すべきである。そのためには、腰腹と手先までが一本に繋がっていなければならない。

前回の「関節を一本に遣う」では、腰腹から手先まで一本の骨のように繋げて遣わなければ、腰腹からの力は手先に伝わらないと書いた。そのためには隣同士の関節を十字に遣わなければならないと述べた。十字に遣って、各関節をロックして一本にするのだが、これを遣うのがまた問題なのである。

人は技の稽古においても、日常と同じような手の遣い方をしてしまうものだ。一言で言うと、「直線的」であると言える。前回書いたように、ロックしないような方向に遣ってしまうのである。

合気道での動きの基本は、十字である。動きやすい方とその十字になる方に動かせば、螺旋の動きになる。○(円)に十である。先端が螺旋に動くことによって、カギが掛った関節は「一本の骨」として順次繋がって動くことが出来、腰腹の力を引き出せるのである。これを直線的に手を遣うと、隣の関節のところでカギが外れ、繋がりが切れてしまい、折れ曲がることになるので、腰腹からの力は届かず、手先の力を遣わざるを得なくなることになる。また、場合によっては手首や他の関節に負担がかかりすぎて、痛めることにもなるのである。

合気道では手先は原則として先に動かしたり、主導的に動かすことはないわけであるが、しかし手先は正しく動いていなければならない。そのためには、手先が腰腹と連動して、反転々々と螺旋で動かなければならない。さもないと、その上にある関節が連動して動くことが出来ず、力も出ないし技もかからないことになる。はじめ(手先)が肝心なのである。

武道だけではなく、スポーツや芸事でも、力がいるもの、美を重視するものの手先の動きは、自然で美しくなければならない。それは、手先を操作した動きではなく、腰との連動で、腰から動いたものでなければならない。手先は動かすのではなく、しかし動いていなければならないのである。体の末端の手先が自然に動くようにしたいものである。