【第184回】 硬さと息づかい

人は年をとるに従って、体も頭も硬くなってくる。細胞は死滅していくし、皮膚の水分も減少していくので、仕方ないことである。

武道では体が固ければ技も効かないから、体を硬くしないように遣ったり、体が硬くならないように、体操などでほぐしていくしかないだろう。

合気道の稽古を長年やっている人でも、呼吸(息づかい)が間違っていると技がかからないし、体をますます硬くしてしまうことになる。息づかいは体を柔軟にする意味でも大事である。

息を入れる吸気で、体は柔軟になる。逆に、呼気では筋肉が張るので、体は硬くなる。体を柔らかくする柔軟体操では、伸ばすときは吸気を遣わなければならない。これを呼気でやっていれば、体はどんどん硬くなることになる。また、技を掛けるときでも吸気を遣わないと、自分の筋肉を固めてしまい、相手をはじいてしまうので、技が掛かりにくいことになる。

技を掛けるときは力を出すが、その力には意識を入れ、呼吸でやらなければならない。呼吸とは息を吐いたり吸うことで、所謂、呼気と吸気ということである。相手に接するまでは呼気、接して相手を投げたり抑え込むまでは吸気、投げたり抑え込む時は呼気、次の態勢に戻るまでは吸気、そして相手に接するため呼気・・と息を遣えばいい。

まずは、呼吸(息づかい)に注意して稽古することである。相手をなんとかしよう等と考えたりすれば、呼吸は乱れてしまうことになる。

自分を自制するのは容易ではない。自分との勝負である。受け身での息づかいも同じである。取りでも受け身でも、この息づかいが乱れれば、はーはーぜーぜーと息が乱れることになる。それで肺や心臓が丈夫になるのだから、よい稽古になるとも言えるが、高齢者になったら今さら心臓や肺を鍛える年でもないのだから、はーはーぜーぜーの稽古は避けて通った方がよいだろう。

それよりも、呼吸に合わせて動くように努めた方がいい。もちろん、そう簡単にできるものではない。肺や心臓がある程度できていなければならないし、よほど注意をしないと、小我の「私」が頭をもたげてくるからである。しかし、呼吸によって動く修練を積んでいけば、無理なく肺や心臓は丈夫になるし、体も柔軟になり、そして技も上達するはずであるので、高齢者に相応しく、いつまでもできる稽古法といえよう。

無駄な息づかいをすれば体は硬くなるし、疲れるし、体を壊し、長続きしない。 正しい息づかいで体を柔軟にし、長く合気道の修行を続けていきたいものである。