【第18回】 やわらかく

高齢になると、一般的には体が硬くなる。高齢者と稽古をしていても、体がカチカチの人を投げたり、押さえたりするときには、充分注意しないと壊してしまいそうな気がしないでもない。

しかし、高齢者がみんな硬いわけではない。中には柔らかい人もいる。同じ高齢者でも体が柔らかい人と硬い人があって、程度の違いにもよるが、よく観察してみると、結局は頭の柔軟性に関係があるような気がする。簡単にいうと、高齢者で体の硬い人は頭も硬いように思える。

頭が硬いということはどういうことかというと、自分の考えに固執しがちで、その他の考え方を受け入れる柔軟性が少ないということであろうか。 稽古をしていても自分のやり方が一番だと思い、他の人のやり方を認めないとか、受身をとらず頑張るとか、自分のやり方を相手に押し付けるようなタイプである。

それでは、頭が柔らかい人になる、あるいは頭を柔らかくするには、どうすればいいのだろう。いろいろあると思うが、先ずはいろいろな事に興味を持つことだ。そして、それで驚いたり、感心したり、喜んだり、怒ったりすることである。できれば目にするもの、接するものすべてに興味をもてると、どんなに楽しく、素晴らしいことだろう。なんでも興味を示す人の所へは、多くの人が集まって興味ある話をしてくれるものである。

感動することも必要である。かって女性代議士の走りであり、女性解放運動の先兵であった加藤シヅエ代議士は、100歳以上生き、晩年まで講演をしたり、執筆したりして活躍したが、その長寿の秘訣を、「一日10回感動すること」だといっていた。ではどうしたら感動できたかというと、物事をいい加減に聞き流さないで、ひとつひとつ真面目に受けとって聞くことで、感動の種はいくらでもあるとのことであった。

また、自分の苦手なことに挑戦することも挙げられるであろう。若いときは自分の得意なものを伸ばし、高齢になったら苦手なことを克服する。苦手なことに挑戦していく高齢者の姿は、若々しいものである。それに、この両輪で人生がより豊かにもなるはずである。

合気道の稽古で、常に新しい発見をし、感動できれば頭と体が柔らかくなり、長生きもできて、人生の後半も楽しくいけるのではないだろうか。