【第162回】 円の動きとは

一般的に合気道の動きは円いと言われているようだ。しかし多くの稽古人は技を掛けるとき、グルグル回ればいいと思っているようだが、円い動きの意味を取り違えているように思える。

植芝吉祥丸二代目道主は『合気道技法』に、「合気道の技を仔細に検討してみると、すべてが円転の理と、入身一足の理から成り立っている。」と書いておられる。この円転の理をグルグル回ると思ってしまうのだろう。

さらに、「円転の理とは、自己の右足または左足、或いは体全体が中心となって、相手にその動きを及ぼすことである。あらゆるものを吸収する求心力と遠くへとばす遠心力の相互作用である。」(『合気道技法』)という。また、「動きは線であるが、螺旋状に円転する線である。」(同著)とも言われる。つまり円の動き、円転の理とは、まず自分の体や手足は、最短距離をいく直線的な動きであるが、それが螺旋状に円転する軌跡にならなければならないのである。

体も手も螺旋で円転するためには、中心がなければならないはずである。腰や足に、しっかりとした中心をもたなければならないことになる。中心があるから、相手を円転で動かせるということである。自分を中心にして、遠心力と求心力で相手を飛ばしたり、自由に動かすことができるのである。実際、技が効いている場合は、相手は自分の周りを円転しているはずである。逆に、相手がしっかりしていて、こちらの技が効かない場合は、自分が相手の周りを回らされるものだ。

合気道の基本の動きは三角法であり、撞木の足遣いであるから、一見して直線だけの動きに思えるが、これが円の動きになる。撞木もそうだが、合気道は十字道とも言われるように、十字になるように動く。例えば足を十字(直角)、十字で遣って動けば、体の中心に置いた手先の軌跡は円になる。これが円に十で になるのだろう。ここに直線的な動きが円の動きになるという秘密があると言える。

正面打ち入身投げの表でも、片手取り四方投げ、諸手取り呼吸法等でも、手、体、足は最短距離の直線的に遣わなければならないが、その結果、手、体、足はそれぞれの円の軌跡を描くとともに、それらの円の組み合わせの動きで相手を円く捌くことになる。

合気の技は、いろいろな円の組み合わせでできるのである。手だけでも、手首、肘、肩、胸鎖関節、腰、膝、足等だけでも、それぞれを支点にした円の動きができるし、またそれらが同時に動くこともできるので、幾つもの円の動きが組み合わされることになる。また手は内旋外旋と旋回するので、各円は同調したり、お互いが重なったり、直角に交わったりすることによって、遠心力や求心力が働き、相手と結んだりはじきとばしたりするのであろう。開祖はこれを、「円の動きのめぐり合わせが、合気の技であります。」と言われているのだろう。

参考文献:
 『合気道技法』(植芝吉祥丸)
 『合気神髄』(植芝吉祥丸)