【第158回】 体を面に

合気道の基本的な構えは、「心をまるく体三面に開く」と言われる。開祖がよく言われていたし、その構えを示されていた。

この教えの一つは、体は面で遣わなければならないということである。面とは平らなことである。つまり体は板のように面で遣わなければならいことになろう。

初心者の体、体幹は、技をかけるときに歪み勝ちである。捻ったり、ネズミに跳びかかろうとする猫のように背中を丸め、胸を引いてしまっているので、板のように面になっていない。これでは自由で素早い動きはできないし、十分な力も出ない。正面打の一教や入身投げが上手くいかない理由のひとつが、この体を面で遣っていないことにあるといえる。

体を面として遣うためには、まず体(体幹)を面にしなければならない。板のように面にするといっても、板を削るようにカンナをかけるわけにはいかない。カンナの代わりに意識(気持ち、念)と呼吸と筋肉で、板にするのである。

ま、体に意識と息をいれて体の前面(胸、腹の側)と背面(背中、腰の側)を面にする。胸に息を入れながら肩は下げ、背中の菱形筋などをしめると、胸が広がり、胸が張る。肩と胸と腹、また肩と背中と腰がつながり、体が一つになる。手は重くなり、腹腰と結ぶ。結び合った手と体を足と結んで一体化する。これで、体と手と足が一体化して動けることになる。

体を面とするためには息づかいが大事であるが、この息づかいは、弓を引くときの吸気と言えよう。この息づかいで、息と意識を体の隅々まで浸透し、体の各部位を結ぶのである。まず、吸気が大事である。

次に、体と手と足が連動して動かないと、どこかに無理が生じ、体がねじれたり歪んだりして、面が崩れてしまうので、体と手と足は連動して動くようにしなければならない。このためには、体軸の規則正しい陰陽の移動が重要である。 また、中心軸が正しく取れていないと、面は崩れる。自分の中心軸と相手の中心軸を取らなければならないのである。この双方の中心軸を取ることによって、この面が威力を発揮し、合気の命とも言える入身や転換が可能になるのである。

面が威力を発揮するには、体は三面に開いていなければならないが、足の構えと動きは常に撞木になっていなければならない。撞木の構えによって、体は三面になる。これで自由自在に動けるようになるはずだが、動くとき、技をかけるときにもこの面を崩さないようにしなければならない。体の面はいかなる場合でも、面を保っていなければならない。注意しないと、入身をしたり転換をするときに面が歪んでしまいがちである。正面打入身投げで入身するとき、四方投げで前に進むとき、二教で手首をきめるとき等々に、胸をつめてしまい面を崩してしまうことになる。

構えたときから、入身転換し、技を掛けるとき、技をおさめるまで、いかなる技の稽古においても、体を捻らず、体が面を保つように意識して稽古するほかはないだろう。