【第15回】 道楽

私にとって、合気道は「道楽」である。私はこの「道楽」という言葉が好きだ。この言葉を使っていたのは、本部道場の故有川師範だった。「合気道マガジン」の1989年4月号で、「先生にとって合気道はなんですか」、と聞かれて、有川師範は「『道楽』だね」と答えられていた。それ以来、私の合気道も私の道楽にしたいと思うようになった。

それまでは、一般的に趣味は何ですかという問いにたいして、合気道ですと答えてはいたが、何かすっきりしないものがあった。
「道楽」を辞書で引いてみると、
(1)本職以外の趣味にふけること。趣味を楽しむこと。また、その趣味。
 「食い―」「着―」「―に焼き物をする」
(2)酒色・ばくちなどの遊興にふける・こと(さま)。
 「若い頃は随分―したものだ」
 「―なお方でございますので/真景累ヶ淵(円朝)」
(3)〔仏〕 仏道修行によって得た悟りのたのしみ。

とあり、また、一般的には道楽息子とか道楽者など、あまりいい意味では使われていないようだ。しかし、(3)の仏教での使われ方が恐らく本来の意味と考えられるので、「道楽」はもともとはいい意味で使われていたのではないだろうか。

一方、「趣味」を見てみると、
(1)専門としてではなく、楽しみにすること。余技。
(2)物のもつ味わい・おもむき。情趣。
(3)物の美しさ・おもしろみを鑑賞しうる能力。好み。感覚。


これを見ても、「道楽」というのは自分の人生をかけたもので、趣味は自分の人生の一部という違いがあるように思う。
合気道を修行する人は沢山いるが、多くは趣味としてやっているといえるのではないだろうか。
しかし、合気道を「道楽」としてやる人が増えることを期待したいものである。