【第131回】 こころ

人の体はさまざまな状況や環境のもとに置かれるが、心と上手に連動しながら心身相関を行なっているらしい。例えば、緊張や運動量の増減に従って、アドレナリンとノルアドレナリンの分泌が増減するのである。

体と心の働きに密接な相関関係がある典型的な例としては、スポーツを観戦していても興奮すると手に汗を握ってしまう。また「あがる」場合には、脈拍が早くなって、手の平や額に汗をかき、口がからからになる。または血圧と体温が上がって、胃腸が痛んだりする。これは、心が体の働きに強く影響しているわけである。

逆に、体の状態が心の働きに影響を及ぼす例としては、腹が減るといらいらしたり、歯通や頭痛があると気が滅入ってしまう。また、適度な運動をして体がリラックスすると、気分爽快になるなどが挙げられるだろう。

合気道では、心と体の調和が大事である。体を鍛え、心を磨き、そして鍛えた体と磨いた心が調和して、働くようにしなければならないのである。開祖は、「手、足、腰の心よりの一致は、心身に、最も大切な事である。ことに人を導くにも、また導かれるにも、みな心によってなされるからよくよく考えること。」(『合気真髄』)と言われた。

心の伴わない業(わざ)は「死に業」であるし、相手をやっつけようなどという心の業、つまり心の欠けた業は争いのもとになる。合気道は愛の武道でなければならないわけだから、心の通った業、業に心を通わす武道でなければならないのである。究極の心とは、愛という宇宙生成の心であるといわれている。

参考文献:
『合気真髄』(八幡書店)
『こころとからだのしくみ』(あいり出版)