【第13回】 愛

最近になって、映画、テレビ、本、雑誌、広告などで目につくようになったテーマが「愛」という言葉である。二三の例をあげると、「愛・地球博」(万博)、2005年今年の漢字は「愛」(日本漢字能力検定協会)、映画のタイトルでも「愛より強く」「真実の愛」「世界の中心で、愛をさけぶ」「愛をつづる詩」等など。「愛」が今、人々が求めているキーワードのようだ。
その点、合気道は愛の武道であり、無私の愛、至愛がなければならないといわれており、他に先駆けるものがある。

先日、恐竜展で一億年ほど前に生存し、地球の支配者であった恐竜の化石を見たり、触れたりしてきた。(一部の化石は触れることが許可されている)
恐竜を見ても、これが哺乳類、人類とつながって遠い祖先であると思うと親しみを覚える。46億年前に地球が誕生したが、生物はなにも生存していなかったのに、恐竜が出現したり、今では人類が生存していることを考えると摩訶不思議に感じられるではないか。更に不思議なのは、137億年前なにもなかった無から忽然とポチ(一元の神)があらわれ、一元の神が営みをはじめ、宇宙が誕生し、地球ができそして恐竜や人類が出現したことである。われわれ一人一人も、恐竜も、草木や岩石もすべてこのポチ、一元の神とつながっているということであり、みんな親族、親戚筋である。従って、われわれの生みの親である地球は「母」となる。大事にしなければならない。
開祖は、「美わしき、この天地の御姿は、主の造りし一家なりけり」と詩っており、そして「世界は一軒の家で、決して他人というものは一人もいない。」といわれた。

合気道には試合がない。稽古でも争いは禁じられている。稽古中たまには小さな争いがあるが、それは地球家族の中での兄弟げんかのようなものである。 しかし、国同士や国内のトラブル、犯罪などで人を殺すような争いは、自分の家族を殺すことにつながるので、宇宙の理道に反することとなる。
地球に生存するすべての人が、自分はこのポチ(一元の神)とつながっており、また、他のすべての人々もつながっていて、地球を母とする地球家族であると考えるようになったら、戦争や争いのない平和な世界、宇宙の理道に合った世界がくるのではないか。

開祖は、「世の中のすべては愛によって形づくられている。文化も科学も、愛の大精神から出ている。」という。芸術、科学、技術、製品などは人に喜びを与えるために作り出される「愛」の産物でなければならない。もし「愛」の欠けたモノ、例えば、原子爆弾などをつくってしまえば世界、地球、宇宙とその家族に災いを及ぼすことになる。
合気道の稽古も、地球家族といっしょに時間と場所を共有しているのであるという感謝の気持ちを持って、相手の立場に立った「愛」のある稽古をしなければならない。