【第124回】 健康づくり
技術革新によって人の生活は快適になってきているが、半面、人の健康はむしろ退化し、ストレスが増えてきている。
健康とは心身の健康をいうが、退化したり、ストレスに陥った心身の健康づくりは、人の動物的機能回復からはじめるのが簡単であると言う。
つまり、人は歩く動物であるので、まず歩くことを基準とした動きをすればいい。人は歩くことによって、体力増強はできなくとも、健康維持はできる。人は動かなくなると、臓器の機能低下に陥り、臓器が萎縮し、動物としての機能が著しく低下することになる。特に骨がもろくなって、骨粗粗鬆となり、骨折しやすくなるという。
歩くことは、高血圧の予防にもなるという。普段の生活の中の通勤時の歩行時間によって高血圧の予防が出来るというのである。(「動きを生み出す こころとからだのしくみ」あいり出版)
歩く以外で、どのぐらい体を動かせばいいのかの目安になる運動と時間を、上記の本の中の「健康づくりのための運動所要量策定検討会報告書」で発表している。
(毎日行なう場合の1日の運動時間)
速歩(100M/分) |
25分 |
エアロビックス(軽く) |
25分 |
自転車(18キロ/時間) |
25分 |
水泳(ゆっくり) |
25分 |
ジョギング(120M/分) |
20分 |
(注)概ね30歳代の健康な人を対象
高齢者になると、段々体を動かさなくなり、ますます骨や筋肉が弱くなって、更に体を動かさなくなってしまうので、糖尿病やまた痴呆になりやすくなる。
高齢者に対するこの対策として、「21世紀における国民的健康づくり運動(健康日本21)が、高齢者の各個人が取り組む目標として、次のような項目を挙げている。
〇年齢や能力に応じて以下の社会参加活動のうち一つ以上を行なう。
・能力や体力に応じた仕事(フルタイム、パートタイム)
・知識や経験を生かした地域活動やボランティア活動
・知的・文化的学習活動
・興味や関心を生かした趣味や稽古事
〇年齢や能力に応じて以下の運動のうち一つ以上を行なう。
・ストレッチングや体操を1日10分程度行なう
・散歩やウォーキングを1日20分程度行なう
・下肢および体幹部の筋力トレーニングを1週間に2回程度行なう
・レクレーション活動や軽スポーツを1週間に3回程度行なう
(健康日本21企画検討会・計画策定検討会報告書)
高齢者は健康のためにも、歩くことを基本として、社会活動に参加したり、運動をして体を使わなければならないということである。合気道はこの観点から、理想的なものといえるだろう。上の表で見れば、「〇年齢や能力に応じて以下の社会参加活動のうち一つ以上を行なう。」では、「興味や関心を生かした趣味や稽古事」が該当するし、「〇年齢や能力に応じて以下の運動のうち一つ以上を行なう。」では、一つどころか、四つすべてに該当すると言えるだろう。
合気道の仲間と一緒に、週に数回、軽く稽古をするのは心身の健康に最適である。合気道の稽古は、技術革新とは関係なく、動物の機能を回復するものでもあり、本来の人の体と心が取り戻せるようである。
合気道をしている高齢者は、出来るだけ稽古を長く続けるようにと願うものである。
参考文献 『動きを生み出すこころとからだのしくみ/スポーツの神経科学』
あいり出版
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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