【第123回】 渦巻き

合気道で技をかけるときは、力が要る。合気道は力を必要としないなどということはない。開祖が米ぬか3合持てる力があれば十分だといわれていたが、それは力がなくてもいいということではなく、出来るだけ力に頼らず、力を使わないようにやりなさいということである。力はどんどんつけて、しかしその力を使わないようにしろということである。

だが、相手を倒すのに力は入らないというのは、ある意味で半分は正しい。技を掛けて相手を倒すとき、相手をくっつけて崩してしまえば、後は相手が自分から"喜んで"倒れるので、崩した後はほとんど力を使わずに相手を倒すことができる。この相手を崩した後の後半を見れば、相手を倒すのに力を必要としないと言うことは出来る。

しかし、少なくとも相手を崩すまでは力は要る。合気道だけではなく、どんな武道でも力が要らないものなどないし、その力が強力であればあるほど崩しやすいはずである。

そこで、合気道で自分の力を強力にするにはどうすればいいかということになるが、ここでは強力な力をつけるための鍛錬法ではなく、自分の力を強力にするための力の使い方を取り上げることにする。

合気道の動きは円であるといわれるが、唯の単調な円では技は効かないものである。渦巻きの円でなければならない。合気道の技は宇宙の営みを現すものであるが、宇宙に星や星雲が創り出されるとき、または恒星や星雲から星が誕生するときは、渦巻きからであるように、合気道の技を掛ける(技を生み出す)ときも渦巻きで力を使わなければならない。

この渦巻きは空間だけではなく、時間的渦巻きでもなければならない。つまり渦巻きの「拍子」である。渦巻きの「形」と「拍子」である。そして、これに「気」を入れるのである。そこに強力な力が出る。開祖は、「武の気はことごとく渦巻きの中に入ったら無限の力が湧いてくる」と言われている。

この渦巻きの動きの稽古で最適な合気道の技は、片手取りおよび諸手取りの「交差取り二教」であろう。渦巻きの中に力と気が正しく入れば、想像以上の力がでてくる。しかし、注意しなければならないポイントが幾つかある。そのひとつは、相手と接触している手を初めに動かさないことである。まずは、星雲の芯、台風の目に相当する体の中心から動かし、その力を中心から末端の手先に伝えていくことである。つまり手ではなく、腹で二教を決めることになる。

交差取り二教の他に、渦巻きの稽古としては、回転投げ、小手返し、呼吸投げなどが適しているが、本来はすべての技は渦巻きの要領で収めなければならないはずである。動きが難しければ、先ずは気だけでも渦巻きで使わなければならない。

また、木刀の素振りも渦巻きの稽古になる。特に小手打ちなどは、合気道の「交差取り二教」に通じ、腰手足の渦巻きの要領は交差取り二教と同じである。木刀を使うと、体術よりも渦巻きの形や拍子が練習しやすい。