【第122回】 これがないと合気道にならない
合気道を創り、完成させた植芝盛平翁は、門人たちに、合気道とは何か、合気道を修得するためにはどうしなければならないか等、若輩の我々にはよく分からなかったものの、事あるごとに説明されていた。今では開祖のお話を聞くこともできないが、有難いことに白光真宏会での開祖の講演を記録した「武産合気」や合気道新聞及びそれをまとめた「合気真髄」で、開祖のお考えを知ることが出来る。
合気道を修行している者は、少しでも上達したいと願いながら稽古に励んでいる訳だが、なかなか上達しないし、時として上達が止まってしまうこともある。初心者の段階では、稽古をやればやるほど上達するものだが、上級になるに従い、いくら一生懸命稽古をしても、上達が保証されなくなってくるものだ。
生前もお講話でもよくお聞きしたし、前述の書にも書かれているが、開祖は、「何々を知らなければ、合気は分からないとか」「何々にならなければ合気はできない」とよくいわれた。つまり、合気道が上達するためには、万人共通の前提、やらなければならない事があるようだ。幾つか目についたものを取り出してみる。
- 「真空の空のむすびのなかりせば 合気の道は知るよしもなし」
- 「合氣道は、まず『天の浮橋』に立たなければならない」、『天の浮橋』に立たなければ合気は出てこないのであります」
- 「宇宙と人体とは同じものである。これを知らねば合気はわからない。なぜならば合気は宇宙のすべての動きよりでてきているからであります。」
- 「合気は、全宇宙体の玉の糸筋を感に受け、六魂を通じて、自在に使わしていただくようにならぬと真の合気とはならぬのである」
- 「日月の気と天の呼吸と地の呼吸、潮の干満との四つの宝を理解せねばいけないのであるである。これが分からなくては合気道はいけない」
- 「合気は十分気を知らなければならない。武の気はことごとく渦巻きの中に入ったら無限の力が湧いてくる」
- 「自分の中心を知らなければなりません。自分の中心、大虚空の中心、中心は虚空にあるのであり、自分で書いていき、丸を描く。丸はすべてのものを生み出す力をもっています。全ては丸によってでてくるのであります。きりっと回るからできるのです」
合気道を精進するならば、この関門を突破しなければならない。まずは開祖が使われている言葉の意味の解釈をしなければならない。「真空の気」と「空の気」、「天の浮橋」、「玉の糸筋」などの意味である。そしてそれを「わざ」に現わされなければならない。「わざ」に現わすことができなければ、その言葉の解釈が間違っていることになる。
これが合気を会得するための条件の一部であろうが、これが出来なければ合気道にならないと開祖が言われているのだから、自得すべく努力すべきであろう。
参考資料 「合気真髄」植芝吉祥丸監修 八幡書店
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