【第1014回】 基本的な手のつかい方考

合気道は手で技を掛けるので手は大事である。手が大事という意味には二つある。一つは物理的な手肉体的な手の手である。折れ曲がったりしない頑強な手であり、縦横左右に伸び縮みする柔軟な手である。二つ目は機能である。自在に機能する手である。まずはじめは意志に従い、次は息により、更に気に則って機能する手である。要は宇宙の条理法則に合して働く手ということになる。

これまで手のつかい方をいろいろ試行錯誤しながら研究してきた。腹と手先を結び腹で手をつかう、イクムスビの息づかいで手をつかう、布斗麻邇御霊の水火の形でつかうなどである。お陰で手のつかい方は大分よくなったようである。しかしまだ不十分であると感じていた。特に、最初に相手と接する手である。不安定であり、力強さが十分でなく、また、この手に触れた相手に反応がないのである。こちらの手は、相手が打ってこようが、掴もうが、相手はこちらと一体となり、凝結したり、くっついたり、また、浮き上がらなければならないと考える。技は相手と接したときが最も肝心であるはずだからである。つまり手がまだ十分に働いてくれていないということなるのである。

先日、道場稽古で後ろ両手取りの稽古をしていた時、手の基本的なつかい方はこの両手取の手のつかい方ではないかと直感したのである。
相手が掴んだ己の手を、親指を体（支点）に地に下ろすと己の手の手刀部（小指側）が上に返り、そして相手が自然に小気味よく上に浮上がるのである。それほど力を入れているわけではないし、相手を上げてやろうとも思ってもいないのに浮き上がるのである。受けの相手もどうなっているのか分からないようだが、悪い気持ちではなさそうである。これなら争いは起きないようだ。
しかしこのためにやるべき大事な事がある。それは息を吐きながら親指を地に落とすと同時に仙骨を開く（立てる）ことである。これで腹の気が腰に返り手先、特に上に上がる手刀部に強力な気が出る事になり、そこに触れている相手は浮き上がる事になるわけである。これまでの息や気の力とは質的、量的に比べ物にならない力である。
浮き上がった相手とは気結びしているから、後は己の親指（体）を体にして手刀部を操作すればいい。

この後ろ両手取りの手づかいで手をつかえばいいということになる。片手取り呼吸法でも正面打ち一教でもこれでやるとこれまでよりも上手くいくようである。この手によって相手とくっつき、相手が浮くので合気道の手づかいと実感出来る。恐らく他の技、入身投げ、小手返し、四方投げ等々でも有効であるはずである。つまり、手をつかう基本ということ、基本的な手のつかい方ということになると考える。しかしこれが、唯一の基本の手のつかい方という確証はない。だから、「基本的な手のつかい方考」とした次第である。