【第641回】 筋肉・関節を鍛える

長年、稽古を続け、そして高齢になってくると、技が少しずつ遣えるようになり、呼吸力も多少できてくるので、相対の相手を投げたり抑えるのは、以前よりも容易になる。また、古株ということで、大概の相手は多少遠慮したり、力を抜いて稽古をしてくれる。年寄には有難いことではあるが、問題もある。

年を取ってくれば、体力や筋力は衰えてくる。これは自然の理であるから仕方がない。出来るのはその衰える速度を少しでも抑えることである。
特に、最近、気がついたのは、やはり筋肉と関節の衰えである。適当にやっている分には気がつかないが、しっかりと抑えさせて、決めさせるとその衰えに気が付く。

衰えるなら、鍛えなければならない。二つの方法がある。
一つは、通常の相対稽古で相手にしっかり決めてもらうことである。一教、二教、三教、四教、五教と相手に力一杯決めさせるのである。そのためには、まず、受けも形にはまってやることである。痛くないように逃げるのではなく、少しでも痛くなるように、自分から相手を形に導いてやるのである。

二つ目は、自主稽古で、力のある人で、信用できる人に、二教裏などを掛けて貰う。10回とか20回とか決めて、連続で掛けて貰うのである。これは昔、初心者の頃によくやったものである。一か月もすれば、相当耐えられるようになるはずである。

一人に10回、20回やってもらって、耐えられるようになったら、今度は、両方の手を、二教や三教で二人同時に掛けて貰うのである。これは、痛くとも手を叩いて参ったと示せないから、場合によっては相当きついことになるはずだ。これも過ってやっていたことであり、効果は大きい。

ここで大事な事は息づかいである。例えば、二教裏で決めてもらう場合、息を吐いて頑張るのではなく、息を引いて(吸いながら)我慢するのである。息づかいは、技を掛ける側と同じイクムスビで、クーで鍛えるのである。
この息づかいは、過っての若い頃とは違う。過っては、息を吐いて頑張っていたものである。息を引きながら頑張ることになるから、今度は相当鍛えられるはずだから、どのように筋肉・関節が鍛えられるか楽しみになるだろう。