【第622回】 若さを司る臓器「骨」

長年生きて来て分かってきたことがある。その一つに若さがある。
人は古来からどこの国や地域でも、若い若いと見られながら、少しでも長生きしたいと願って生きているようであるということである。

今では、日本だけで100才以上の高齢者は6万人以上おられるという。ただし、その内のどれだけの方が健康で100才を楽しんでいるかは不明である。
他人はともかく、己本人のことが大事である。つまり、若くして100才長寿を楽しむことができるかどうかということである。100歳になっても、ベッドに横たわり、チューブから栄養を取り入れていたのでは、面白くない。

高齢になっての若さは、主に次の二つのことからくると考えている。
一つは、精神面である。如何に瞬間々を楽しむことができるかである。怒ったり、楽しんだり、泣いたり、笑ったりすることができることである。合気道的に云えば、自然であること、宇宙との一体化である。合気道の修業の目的はここにあるわけだから、合気道のレベルが上がれば、精神的な面では若くなるはずである。

二つ目は、肉体的な面である。これまでは運動して汗をかけば若返るといわれてきたわけだが、今回はもう少し的を絞り、そして別な角度から肉体を見ることにする。
それは「骨」である。
先日、NHKスペシャル「人体」を見て、勉強したことである。

ここでのテーマは、骨は若さを司る臓器であるであった。骨は、最高の若返り物質である「オステオカルシン」を出すという。そして、記憶力、免疫力、筋力アップ、精力アップ(男性ホルモンを増やす)するという。
しかし、骨のためにカルシュウムを取るだけでは駄目だともいう。骨自身が、できたり消えていき、3〜5年で入れ替わってしまうのだという。

次に、骨を強くする方法があるという。
それは、骨に刺激を与える事だという。骨細胞が刺激を感知すると、骨をつくってくれというメッセージを流すのである。つまり、動かないと、若さを保つメッセージが出ない事になるわけである。

合気道の相対での形稽古では、お互いに、また、自身で骨に刺激を与えている。正面打ちや横面打ちで打ちこんだり、打ち込まれ、また、片手取りや諸手取でしっかり掴んだり、掴ませる。勿論、受け身も骨を大いに刺激する。
また、撞木、陰陽、十字で歩を進める、腹を進めて足が進むなどの足づかいによって、足に大きな刺激がもたらされるはずである。つまり、合気道の技づかいと体づかいは、骨に刺激を与えるわけである。

骨は、私たちの活動状態を見張り、若さを保つ判断をしているわけで、骨は若さを保つための門番ということになる。
だから、歩くのがいい。また、階段や山坂を歩くのもいいことになる。
骨は体への衝撃を感じる唯一のセンサーであるという。

現代人はますます歩かなくなってきた。現代の生活は活発さを忘れ、人間本来の進化に逆らっている。若さにも逆らっていることになる。一日、一時間は歩いたり、体を動かしたいものである。なんせ高齢者には時間だけはあるわけだから。


参考文献   NHKスペシャル「人体」